The Black Operaから紐解く現在社会Ⅱ

2019/04/09

The Black Operaから紐解く現在社会Ⅰ

”Worldwide”

まず始めに、The Black Operaとは一体何者なのか。

普段通り、インターネットを駆使してネットサーフィンを数時間行ってみるが、

これといった情報はキャッチできない。

おそらく頑固な匿名性を掲げている集団に違いない。

近頃では、そのような売り出し方をしているアーティストは珍しくない為、

膨大な作業だが、YoutubeアカウントにUPされているMVや、Soundcloud、Bandcampの音源を片っ端から洗い流してみる事に。

作業からちょうど30分経った頃だろうか、

握っていたマウスを自分の手汗で滑らし、私は我に返った。

TBOというアーティストを追えば追うほど、

踏み込んではいけないエリアに自分が入り込んでいる気がし、緊張感が高まっている自分に気づく。

リサーチの結果、彼らはおそらく2012年頃から動きを見せているようだ。

そして、その少ない情報からあることに辿り着いた。

TBOとは、様々なアート表現を通し、完璧な調和を作り上げ、この世界に対抗していく事を目的とした集団

そう、TBOとは、ラッパーでもアーテイストでもなく、ある目的を遂行するために集った組織なのだ。

それゆえ、Bandcampの出身地の欄にはデトロイト、ミシガンを掲げ、

Facebookにはアトランタ、シカゴ、デトロイト、ニューヨーク、ロサンゼルス、パリ。

そしてTBOのルーツには、ナイジェリア、ウガンダ、マダガスカル、フランス、アメリカとあり、続けてこう記載されている。

WE don’t claim just one place; WE take THE WORLD.

”我々は、たった1つの場所とは断言しない。我々はこの世界を取る。”

この1文から私は、TBOをニューヨーク・スタテンアイランドという小さな島から1つの歴史を築きあげたWu-tang Clanと重ね合わせた。

ますます謎が深まり、私の探求心はもう止めることができない所まできているようだ。

唯一の手掛かりとなる彼らの表現方法をさらに掘っていく。

少しずつではあるが、そこから彼らの影がようやく見えてきた。

”one message”

黒い謎のベールに包まれたTBOという組織。

ここで、彼らを紐解いていく為、敢えて1組のアーティストとして説明してみよう。

どうやら表舞台に出ているのは、Jamall BuffordとMagestik Legendの名を掲げる2人。

この2人はソロとしても音楽活動も行っており、面白いことにデビュー当時の名は#120279 #041380と数字であったようだ。

そして彼らの音楽ジャンルはNACM(New Age Cult Music)。

直訳すれば”新時代のカルト音楽”となり、私たちの言葉でジャンル分けするならば、オペラ調のダーク・サイケデリック・ヒップホップとでも言えるだろうか。

文字にすると一見軽く見えるが、私が初めて彼らの楽曲を耳にした際に味わったあのエスプレッソのコクは今でもしっかりと残っている。

その音楽性の高さはもちろん、ヒップホップの黄金世代と呼ばれたレジェンド・ラッパー達から放出されていたのと同じDopeなヒップホップ・バイブス。

そして強固で軸の通ったメッセージ性。

Artistic Freedom Fightersを掲げる彼らのメッセージは様々であり、

人種、政治、芸術的表現、経済学、、あるいはこれら全てをひっくるめ、大衆に何かこの社会に危機が迫っている事を警告しているようにも感じ取れる。

2016年にリリースされたアルバム『African American』では、まるで映画や小説のように展開していくストーリー性のあるもので私たちにメッセージを残した。

13のトラックによって展開されていく同アルバム。

救いを求めて必死に叫ぶ様が哲学的に描かれた「Save US」は印象的であり、

簡易な文化的統一を酷く嘆くタイトル・トラックに加え、

女性の強さを称賛する「Black Woman Is God」などなど、

アルバムを通して、隠され続けてきた自身たちの本物のルーツをダイレクトに伝え、人種的再起を呼び掛けている。

楽曲を聴くだけで、彼らの姿勢は一挙に伝わってくる。

成り上って、光り輝くブリンブリンをつけ、高級車を乗り回したいなどといった浅はかな気持ちは彼らからは全く感じ取れない。

それよりも、もっと深く、もっとシリアスなのだ。

極端な例を挙げるとすれば、今でも最前線で銃を構えるヒップホップ・ソルジャー”Nas”のスタンスを思い浮かべてくれると分かりやすいだろうか。

彼らが我々に暗示しているメッセージとは一体何か。

それは、彼らが頻繁に使用するある言葉から見えてきた。

Demonstration”。

黒いスープの正体は”デモ”だったのだ。

”Demonstration”

彼らが話題となり始めたのは、リリースされてきた楽曲ではなく、ライブ。

そして彼らは、自身たちのライブを”デモンストレーション”と呼んでいる。

ライブ・デモンストレーションでは、曲ごとに衣装を変え、異なるキャラクターを演じ、投影したアートワークを巧みに操るなど、5感で1曲のストーリを大衆に体感させている。

それはまるでパフォーマンスアート、演劇、マルチメディア、そしてラップの融合といえる新たな形として人々の前に現れた。

そこから読み取れるのは、彼らの匿名性というものは、単にマーケティング戦略といった浅はかな次元ではなく、その裏には1曲1曲の個性とメッセージ性をより確かなものとして大衆に伝える意味合いがしっかりと込められている。

自分達の名前や身元は二の次であり、変なレッテルなしにメッセージ性のみを人々の心に届ける重要性。

曲ごとにキャラクターを変える事により、その曲の重みは増し、大衆に意識をもたらすための1つの手段として、彼らは音楽を使って人生やメディアで起こっている事の重大さを伝えているに違いない。

コミュニティ全体を代表して、社会的、人種的、政治的問題についての視点と理解を、彼らは芸術というものを通して広げていき、私たちは1つであるという事を人類に思い出させるという無償の活動を行っている組織なのだ。

そしてTBOは、さらに大きな影響を人類に与えるために、大きなステージを目指し続け、その為に現実の物語を進化させ続けるデモンストレーションをこれからも遂行していくのであろう。

wikipediaによると、、

[デモンストレーション(英語 demonstration)、略してデモ (demo) とは、物事が現実であることを確かに示すこと、事実であることを論証すること、実物に即して本物の機能を示すことなどを意味する。]

まさに、これまでに類を見ない、本物のストーリー・テラーが現在社会に現れたのだ。

The Black Operaから紐解く現在社会Ⅲ〕に続く、、

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g.g
We are One.,Peace.
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The Black Operaから紐解く現在社会Ⅰ

たまにふと考える。HIPHOPというカルチャーが生まれた奇跡的現象について。

それはまるで、ビッグバンから全てが作り上げられていったのと同じ様に、偶然に近い必然の連鎖で形成されていった壮大なカルチャーのように感じる。

私はHIPHOPというカルチャーの持つ、”両極端にある2面性”というものに興味を持った。

生と死。富と貧。成功と失敗、尊敬と中傷、、

それは当時顕著に表れた人種差別や経済格差という厳しい”社会”というフィールド内でのコンペティションから生まれた概念であり、

一瞬でどちらかに転ぶという”緊張感”は人間本来の潜在的なエナジーを引き起こしたのではないだろうか。

当時の社会で押し殺されたアイデンティティを解放する様々な社会への反発と同じように、そのエナジーはニューヨークのブロックパーティという解放の場でHIPHOPという一種のカルチャーへと形成されていった。

そしてそのバイブスは次第に世界中の人々の心を動かし、それから約40年という時を経て、HIPHOPという言葉は1つの概念として人々をまとめあげたのだ。

では、その短い歴史の中でHIPHOPカルチャーはどのように変化していったのであろうか。

”物足りなさ”

壮大なテーマを前に、ふと一息つこうとカフェに向かった私は、濃縮されたエスプレッソで目を覚まそうしたが、持ち合わせの小銭が足りず、やむ無くお手軽価格のアメリカン・コーヒーを。

日ごろの注意度の無さを反省しつつ、薄口のアメリカン・コーヒーで落ち着かせようとするが、やはりなにかが物足りない。

そういえば、物足りなさというものは、先日久々に行った最新チャートが流れる大きなクラブでも味わったなー。など考えつつ、眠い目をこすって作業に戻ろうとした丁度その時、私の頭にある言葉が浮かび上がってきた。

”HIPHOP濃度”

HIPHOPの広がり方はコーヒーと同じではないだろうか。

”珈琲”

ここでコーヒーの歴史をおおまかに。

コーヒー発祥における2つの起源説や10~15世紀におけるコーヒー禁止令など有名な話はさておき、

15世紀初頭のベネチアを皮切りに、ヨーロッパ全土へと浸透したコーヒー。

その黒いスープはヨーロッパの人々を虜にし、イギリスではコーヒーハウスが数多く作られ、紳士の社交場として人気を博した。

男たちはそこで政治を語り文学を論じ、ビジネスを展開していった。

一方フランスでは、コーヒーはフランス上流階級をも魅了してしまい、やがてサロンが数多く作られ、新しい文学や哲学や芸術が生まれていったそうだ。

そしてその波は一般市民にも及んで、街角には溢れんばかりのカフェが生まれていく。

コーヒーというものが大衆に馴染みだした頃、

フランスではドリップ式、イタリアではエスプレッソが考案され、それ以来コーヒーを飲むスタイルというものは徐々に変化を遂げていくこととなる。

この大きな流れはそのまま中南米へと広がっていき、コーヒーの栽培と共に世界各地にコーヒーは浸透していく。

”大衆化”

HIPHOPルーツに精通している方なら、上記のコーヒーの広まり方とHIPHOPミュージックの広まり方になにかしらの類似点を見出したにちがいない。

本来のエスプレッソやドリップ・コーヒーから、お手軽価格で薄口のアメリカン・コーヒー、またもやカフェ・オレ、カプチーノ、ラテ・アートなどなど、、、コーヒーの文化は長い年月をかけて様々な形に進化してきた。

禁酒法時代には、酒の代わりとして人々の心を癒し、その前には薬としても使用されるなど、黒いスープは多くの人々に愛され続けてきた。

やがて街のあちこちにカフェができ、コーヒーは大衆に馴染みだし、ビジネスとして成り立つほどにまで成長。

今では世界中のあちこちで誰しもがコーヒーというものを味わえるものになってきている。

しかし、現在の行き過ぎた大衆化は人々に本来の黒いスープの香りと苦みを忘れさし、利益が先行した薄口で調合されたものを一般的にしてしまっている気がする。

ある時を境に大衆化というものは、じわりと顔色を変え、根本にある本来の味を隠し、簡単で薄い性質に変化させ、一般的概念として成り立たせてしまったのではないだろうか。

時間をかけ、コーヒー豆を焙煎し、湯気の立ったお湯でドリップされて出来た一杯のコーヒーもコーヒーと言われ、自動販売機から出てくる缶コーヒーもまたコーヒーである。

これは、現在の社会のあらゆるものに言い換える事ができ、賛否両論は各々が決める時代であるからこそ、無論強く主張もするつもりはないが、

物心がついたばかりの子供にコーヒーの味を問われた時、私は自販機へは向かわず、焙煎機を手にとりたい。

”現在社会”

話はそれてしまったようでそれていないが、要するに、本物というものを知っているかどうかという事である。

ルーツを知るという事の意味合いは非常に深い。

上記で述べたようにHIPHOPというものは、人間本来の潜在的エナジーから生み出された1つの概念であり、その概念が生まれたルーツを敬い、進化させていき、継承していくという3つの宿命がHIPHOPカルチャーには存在していると私は思う。

もちろん進化を前提にしている為、そのやり方にはこれといった正解はない。

そのため、進化という言葉は様々な捉え方が出来るだろう。

ご存知の通り、現在のHIPHOPミュージックと言われているトラップ・ミュージックは賛否両論を起こしているが、

これもまたHIPHOPの進化の形と言えるはずだ。

しかし、進化以外の2つの重要な要素は、どこかないがしろにされているようにも感じる。

当時HIPHOPが世界中のヘッズの心を動かした、あの言葉にできない衝撃や、リリックの重み、響くメッセージ性など、それらは、その時代の先駆者が放った人間本来のエナジーから滲み出た産物であると私は考える。

現在の社会は、世界的に治安もよくなり、テクノロジーも発展し、昔と比べると、はるかに平和に近づいている。

つい先日 友人が射殺されたという事もなければ、外でたむろしているだけで警察に捕まる事もめったにない。

人々が社会に対して反発する動機は未だ何かしらで多いのかもしれないが、数十年前と比べれば、そのエナジーは弱まってきている。

その為、本来の厳しい社会を生き抜くコンペティションではなく、名声や数字や認知度を基準とされた大衆のコンペティションへとフィールドが移ったように私は感じている。

顔色を変えた大衆化社会での進化形が現在のHIPHOPミュージックと考えると、これはまた面白い。

そうなれば、目の付け所は、現在賛否両論されている音楽表現方法ではなく、そのフィールドを作り上げている現在の社会に目をつけばければいけない。

平和という幻想に形どられた現在の社会に対して本気で挑もうとしているアーティストは果たして存在するのだろうか。

”漆黒のエスプレッソ”

敢えて2010年以降から活動しだしたアーティストに絞り、色々とリサーチしてみる事に。

が、なかなかピンとくるアーティストは出てこない。

確かにそれっぽいものはいくらかある。

現在のトラップの流れに反対するもの。SNS自体に反対するもの。無所属でビック・レーベルに反発するもの。

しかし、私が味わいたいのは漆黒のエスプレッソ。

奥深くに存在する核に向かって正面から挑んでいるアーティストというものは中々見つからない。

徐々に自分で課した作業に嫌気がさし、氷が溶けてほぼ水と化した先程のアメリカン・コーヒーを飲み切ろうとした時、彼らは現れた。

喉に通る無味無臭のコーヒーとは裏腹に、目の前で流れるのは彼らの重厚なミュージック・ビデオ。

漠然と見終わると、それは一口にミュージック・ビデオとは言い難い、久々の緊張感を与えてくれるもの、

言い換えるなら、それは予告状に近いものであった。

アメリカン・コーヒーではなにか物足りないと思っていた私に、久々に漆黒のエスプレッソを味わわせてくれた、彼らの名前はThe Black Opera(ザ・ブラック・オペラ) 。

最近のトラップ・カルチャーを批判したレジェンドSnoopDogg、
Souls of Mischief のMC Tajai Masseyなど、HIPHOPの歴史を築きあげてきた面々が口をそろえてこう言っている。

”TBO(The Black Opera)みたいな奴らが現れるのを待っていたと。。”

「The Black Operaから紐解く現在社会Ⅱ」に続く、、

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まさに聴覚的プラネタリウム。アテネの謎 レーベル”FUNKYPSELI CAVE RECORDS”

ギリシャはアテネを拠点とするFUNKYPSELI CAVE RECORDS。

2013年に独立レーベルを立ち上げ、Bandcamp、Soundcloudで動きをみせているこの集団だが、情報を開示しない彼らのバイオグラフィーとヴィジョンは未知数であり、サウンドのみでレーベル・イメージを構築している。

そのサウンドに線引きを加えるならば、ジャズ、オールドスクール・ヒップホップ、トリップホップ、チルホップなどと分類できそうだが、その域はすでに超えた宇宙的な何かを私たちに提示しているように感じる。

彼らのコスミック・ビートで構成されたアルバム1つ1つに耳を澄ますと、ある時は宇宙旅行、ある時は新惑星の発見など、曇りガラスの向こうにはしっかりとコンセプトは存在している。

新時代幕開けの兆候か、ただ単に彼らの趣味なのか、それともシーンへの挑戦か、、

FUNKYPSELI CAVE RECORDSが作り上げる無重力の世界観の数々を

微塵な憶測は一切抜いて、ストレスフリーで体験して頂きたい。

”Small Trip”

"Clap yo' hands everybody, if you got what it takes, cuz we the boom bap headz and we want you to know that these are The Spacebreaks!"

The new golden era is here. 

(from Bandcamp)

のメッセージと共に彼らが初めて世にだした2017年のファースト・アルバム『Tha Spacebreaks』。

”Clap yo'~”のフレーズで反応したオールドスクール・ヒップホップ好きの方には説明不要だとは思うが、こちらは1980年にリリースされたヒップホップ史の教科書的存在、Kartis Blowの「The Breaks」。

https://www.youtube.com/FcLITA7Ugw0

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緩やかなジャジー・バイブスとクラシック・ヒップホップで構成された14曲で構成されているこちらのアルバムは、起承転結をつけた曲調で小宇宙旅行を楽しませてくれ、ラスト・ソングで丁寧に生まれた星へと帰らせてくれる。

オススメは、シンプルなビート・ループで魅せる5曲目「Kobalt 27」、ピアノとノイズが見事にマッチした7曲目「B Minor」、力強いドラムラインにATCQでお馴染みのあのメロディ・ラインを見事にマッチさせた8曲目「R.I.P.P」。

”Dark Side”

FUNKYPSELI CAVE RECORDS からの2発目を飾ったのはこちらの『Abstract Fusion』。

ジャジー要素を極限にまでダーク・サイドに染めてみた実験的サウンドを感じさせる14曲が収録されている同アルバムは、安心させては、また不安にさせと、リスナーの心情をサウンドで見事に操りきり、つかみどころない満足感のみを私たちに与えてくれる。

オススメはジャジー且つLo-Fiサウンドの効いた3曲目「Trick or Treat」、タイトル通りの8曲目「Evil Passage」、閑静な宇宙感を味わえる10曲目「Asttral Dust」。

”Planet Life”

3作目となったのは、FUNKYPSELI CAVE RECORDS のキー・パーソン的存在とみられるEl Jazzy Chavoがこれまでに手掛けたビートの数々から抜粋した16曲アルバム『Redirections』。

16曲全てを通して、タイトル・ジャケット通り、別惑星での移住生活の光景が浮かび上がってくる。

オススメはクラシックなドラム・サウンドから始まる4曲目の「
Dreams In A Sewer 」、6~8曲間のハードコア・ヒップホップ調のフロー、そして現実世界へゆっくり丁寧に引き戻してくれる12曲目「Spontaneous 」。

”Stoned”

4作品目は、スウェーデンのビートメイカーTWELVEBITによるワールド・ミュージックをチョップしてのMPC打ち込みビート特集『Moon Reflection』。

1~7曲目までは1分以内の落ち着いたループサウンドでゆったりと展開していき、8曲目からは堰き止められていたジャジー要素が一気にあふれ出し、雲から月が顔を出す。

その月光により最高潮にまで浮遊するものの、14曲目に差し掛かった所で心の雲行きは再び怪しくなる。

嫌な予感を漂わせつつ、ついに16曲目の「neva subserviant 」、17曲目の「think about it 」で完全に勘繰りゾーンに突入させられる。

思考の果てまで到達して見えた自身の素直さが現れるのが19曲目の「
straight from the heart 」。

その後は、勘繰った過程を肯定させられるかのように、純粋で落ち着いた曲調へ。

ふと気付くと、終盤の匂いがし、これまでの心の旅の終わりが少し物悲しくも明るい心持ちで、ラストソングを飾るクラシック・ヒップホップを堪能することが出来る。

まるで人の心というものを1つのアルバムで表した、見事なアルバムだ。

”Ⅰ~Ⅻ”

タイトルが数字のⅠ~Ⅻとシンプルに作り上げられているこちらのアルバム『Low Pass Memories』。

全体的にダーク・フィルターをかけつつも、ピアノの旋律でノスタルジー感を漂わせ、色でいう所の白でも黒でもない、どんよりしたグレーをLo-Fiサウンド共にクラシック・ヒップホップで展開していく。

オススメは5曲目「Ⅴ」の記憶探検。

心がぱっとしない日や、曇天の雨にはもってこいの1曲ではないだろうか。

”Back Once Again”

“Boom, bap, boom boom, bap” 
のメッセージと共に、再び1作品目の第二弾『The Spacebreaks vol.Ⅱ』が再起。

ダンスミュージック、ヒップホップを軸に、14曲で構成される同アルバムは、どれもライムをのせたくなるインストゥルメンタル・ヒップホップ・ビートである。

オススメは4曲目「 Mad tricks 」とレゲエ要素が加わる12曲目「Sun bwoi」。

VOL.2ならではの充実度が味わえる、ゴールデン・ヒップホップを蘇らせたアルバムである。

”Short Stories”

こちらは2018年の年末にリリースされた7作目のアルバム『Short Stories』。

特に抑揚なく8曲目までは短い地味なループ・ビートが続くが、思惑通りと言わんばかりに9~12曲でその曲調は一転し、華やかに展開する。

ラスト3曲ではジャズ要素を上手く織り交ぜ全体的に清々しく、お洒落にまとめあげている。

32曲の短編全てをヒップホップ・マナーに忠実に捉わせ、1つの長編へと作り上げた情緒あふれる作品となっている。

”Planetarium”

出だしクールなビートから始まり、ゆっくりと宇宙空間を表現していく2019年リリースの新作アルバム『Echoes From Another Cosmogony』。

聴覚的プラネタリウムを体感したい方は同作に耳を澄ましてみてはいかがだろうか。

おすすめは11曲目の「Without Dreams」。

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グラミー賞を持つ、スペインのDJ/プロデューサー"COOKIN'SOUL"

たった40年という短い期間で今や世界的カルチャーと言えるまでに成長したヒップホップ。ブロンクスの小さなアパートの一室から事は始まったこのカルチャーはニューヨークからアメリカ全土、そして海を渡って世界へと広まっていった。

"DJ"という文化はいつどこで生まれたのか?その意味を細かくご紹介。

そこで今回はヨーロッパの初期のシーンにフォーカスを当て、そのヨーロッパ、ヒップホップシーンにおいて最初に頭角を現し、ハーレムからコンプトン、そして海外において最も早く認知されたヨーロッパのプロデューサー・デュオ”Cookin'soul(クッキン・ソウル)”を紹介したい。

スペインのヴァレンシアを拠点とするCookin'soulはBig Size、Zockの2人組プロデューサー、DJで構成されており、

その数々の業績とキャリアから彼らはグラミー賞を受賞している。

以前とりあげたアムステルダムのフィメール・ラッパーMC Melodeeのプロデューサーでもあり、彼女の記事をTwitterに投稿したところ、本人から”いいね”を頂き、当方テンションがあがったのを覚えている。

ヒップホップ史に名を刻むアーティスト達から支持を受ける女性ラッパー ”MC Melodee”

私がヒップホップにハマり出した頃から彼らはヨーロッパにおけるレジェンド・プロデューサーの座を確立しており、彼らのフレッシュなビートや、原曲を超えてしまうほどのRemixには毎度心を打たれ、今回この場で彼らの魅力を伝えれる事は大変喜ばしい。

彼らの事を調べていけばいくほど、

この人たちヒップホップだな~

と、つい声が漏れてしまう程のヒップホップ・マインドを持つ彼ら。

ヨーロッパはもちろん、本場アメリカや南米、日本、中国等のアジア圏と長年幅広く支持されている彼らは、グローバル化で1つにまとまりつつある現在のヒップホップ・シーンを今後追っていく上では欠かせないアーティストの1組のように感じた。

" OJAYZIS "

2005年からキャリアをスタートした彼ら。

30年以上もの歴史を誇る世界最大のDJ大会、DMCのスペインチャンピオンであった兄を持つBig Sizeとその近所に住んでいたZockは、その刺激的な環境からヒップホップでの成功を目指し、数多のMash UpやRemixを制作。

彼らが全世界から注目を浴びるきっかけとなったのは3年後の2008年の事。

UKの有名ビッグ・フェス”グラストンベリー・フェスティバル”にて、当時全盛期であったJAY-Zのヘッドライナー出演を、90年代に隆盛を誇ったイギリスのロックバンドOASIS(オアシス)のメンバーの1人ノエル・ギャラガーが「JAY-Zはヘッドライナーにふさわしくない」と宣戦布告をし、話題となった。

そこにチャンスの匂いを嗅ぎつけたCookin'Soulは、その騒動がでた日の内にJAY-ZとOASIS、話題の2組をミックスしたミックス・テープを作り上げ、『OJAZIS』として世に出した所、公開から24 時間で10 万ダウンロード以上を記録し、US、UKのMTVニュースにとりあげられ、たったの数十時間で自身たちの名を世界に知らしめた。

嗅覚を研ぎ澄まし、チャンスを者にした彼らのヒップホップ・マインドは、続くマイケル・ジャクソンの追悼の際も働き、ビッグ・ニュースがある度に、彼らのRemixを全世界が待ちわびるというムーブメントが起きたのだ。

こちらはJAY-Zの長年のプロデューサーで、右腕として知られているYoung Guruがスペインに訪れた際にCookin'soulの2人とレコードを通して交友している貴重なドキュメンタリー映像である。

ベテランプロデューサーが語るレコード秘話など、ディガーにはオススメの作品だ。

また、USを中心に様々なアーティストから絶大な支持を受け、楽曲提供を幅広い世代から依頼されてきた彼らだが、これまでにプロデュースを手掛けたアーティストは

Nicki Minaj、Wiz Khalifa、Mac Miller、Joey Bada$$、Pusha T、 The Game、 YG、Curren$y、G-Eazy、Redman、Higher Brothers、、、、

とビッグネームが連なる。

"

"POLO"

Cookin'soulのリミックスやグラフィック・デザイン、アニメ要素など、彼らの作品には多くの日本要素が取り入れられている。

調べてみると、メンバー皆かなりの日本好きであり、これまでに何度も来日しているそうだ。

今は脱退してしまったが、メンバーの1人であったMiltonは大のアニメ好きであり、その影響で日本の文化を知っていったそうだ。

また、彼らと交流が深いと思われる日本人アーティストでは、広島を代表するクラシック・ラッパー”CK”が彼らをイベントのゲストで招いたりケアを行っているらしい。

CKと言えば、90sファッション愛好家の為の1曲「POLO RALPH LAUREN」でお馴染みだと思うが、同曲はCookin'soulがプロデュースを手掛けている。

クラシックを愛してやまないCookin'soulの人気Full Tape『POLO BEATS』は、Lo-FiサウンドとBoom Bapがしっかりと効いた、90sヒップホップ好きに刺さるドープなビートテープとなっている。

"原曲超えRemix"

プロデューサーとしての凄腕キャリアは上記でとりあげたが、

彼らと言えば、時には原曲よりも人気を出してしまうRemixこそCookin'soulを語る上では外せない要素だろう。

ここで、今回初めて彼らを知ったという方の為に、

”Cookin'soulってイケてる!”

と思っていただけるRemix特集を一挙に紹介しよう。

ここにあるもので今月のヒップホップ・サウンドは事足りてしまうのではないだろうか。

噛めば噛むほど味がでるクールRemixを是非。

"最後に"

”決して色褪せないクラシック”を軸に、頑固なヒップホップ・マインドで新鮮なグッド・ヒップホップ・フレイバーを長年私たちに届けてくれるレジェンド・プロデューサー”Cookin'soul”。

つい最近では、北野武演じる任侠フィルムとBiggieを掛け合わしたMVがYoutubeアカウントにアップロードされており、またもや彼らのセンスを魅せつけられてしまった。

来日情報や彼らの新着を今日もまたチェックしながら、数時間前から頭の中でループし続ける”Cookin'Soul~~”のジングルをつい口ずさむ。

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