70年代にフュージョンを切り拓いたブラジルからの刺客 ”deodato” ~前編~

2019.09.19

ブラジルからたどり着いた青年と起こす新しいジャズ革命。今回の主人公でもあるデオダートとクリードテイラーはご存知だろうか?1967年に出会う彼らはジャズ界に新たな旋風を巻起こすことになる。

そもそも、フュージョン、CTIとは?

フュージョンとは、1970年代に生まれたジャズの派生である。マイルスデイビスやキャノンボールアダレイらのモードジャズ全盛期時代のアメリカンジャズだった1960年代1950年代のモダンジャズ全盛期から活躍するマイルスデイビスは、1969年 発売の「In Silent Way」にて、ジャズにエレクトリックピアノの導入。これが後のフュージョンと呼ばれる演奏形態に大きな影響を及ぼす。しかしながら彼のアプローチは、普段からジャズを聞き慣れていない人たちからすれば、まだコテコテのジャズからは抜け出せていないという印象だったようだ。元々リオ・デ・ジャネイロ出身のデオダートは、当時ブラジルの大学でエンジニアとしての勉強に励むかたわら、夜はナイトクラブでピアノ伴奏、ブラジルのポップシンガーの編曲など精力的に活動をしていた。

しかし、自国にある音楽理論の書籍や当時のブラジルのボサノヴァ中心のシーン、当時のブラジル国政による圧迫感などから、懲り懲りしたデオダートはアメリカの門を叩く事になった。そして、このラテンやソウルのノリに目をつけたのがプロデューサーがCTI Records(Creed Taylor Incorporated)の”クリード・テイラー”である。デオダートとクリードテイラーの出会いは1967年。当時、CTIで製作していた”ウェス・モンゴメリー”作品でのセッションを通して以来知り合う事となる。以降、デオダートはCTIを中心とした作品のアレンジャーとしてその才を発揮していく。


これぞ”フュージョン”!世界に初期衝動を起こしたCTI渾身の曲。

まるで、彼らの出会いへの祝砲のように全世界に旋風を巻き起こす新たな福音となったこの一曲。CTIをフュージョンジャズレーベル代表格にまで押し上げた1972年のアルバム「prelude」の一曲目「Also sprach Zarathustra」。リヒャルト・シュトラウスが1896年に作曲したクラシック音楽でもある『ツァラトゥストラはかく語りき』の序奏部分をベースに、ソウル、ロック、ジャズなどのジャンルの垣根を越えて見事にアレンジ。ボサノバやラテンと呼ばれる自然賛歌のナチュラルでユニークな音楽性が上手くマッチしている。音楽に対する演奏を行う上でのしがらみを取り払い、今では名プレイヤーとして語られるベーシストのロン・カーターやギターのジョン・トロペアの自由なパートソロも必聴だ。

この曲は全米第二位の異例のセールスを記録するなど、ジャズというジャンルを大衆化させた皮切りの作品となった。後にCTIは、前回にも紹介したピアニストBob Jamesやギタリストの”ジョージ・ベンソン”らを最高峰のプレイヤーに育て上げ、70年代のジャズ界の潮流を駆け昇っていく事になる。また、その序奏部分をループさせ、各奏者がソロパートを演奏するというのは、サンプリングを元にして作曲する現代のヒップホップと近い感覚だろう。フュージョン版とクラシック盤を聴き比べる事で、このデオダート・アレンジの魅力を感じ取ることができるでは無いだろうか。




Writer / EZ

soul ミュージックが好きなEZです。 好きなアーティストはLUNCH TIME SPEAXとさだまさしです。