The Black Operaから紐解く現在社会Ⅲ
2019.05.16

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黒いスープの中身が分かり、少し満足気にその余韻に浸る。と同時に、TBOが今後も遂行していくであろう”デモンストレーション”というものを噛み砕いてみた。彼らには断固とした目的、それもシーンやファッションという小さな枠組みを超えた、巨大なものが明確に存在しており、人種的、社会的、世界的といった大きなスケールで、彼らのミッションを遂行している。彼らのミッションは、もはや宿命と言えるであろう。
では、冒頭で語った人間本来のエナジーというものを放出する必要性がなくなったこの時代に、TBOという組織の歯車がフル回転し続けている原動力は、一体どこからきているのだろうか。おそらく、この平和にみせられた現代社会には、私たち人類にとって何か重大で重要な事が隠されており、その沈黙のルーツを解き明かす貴重な情報を元に彼らは動いているに違いない。そしてHIPHOPというカルチャー全体は、その沈黙のルーツと密接に関係しており、先人のアーティストたちはそれぞれの表現方法、いわゆるHIPHOPの4大要素という自己表現方法を駆使し、今の私たちに重大な情報を伝えるバトンをつなげてきたのだ。
もちろん、そのバトンというものは、アンダーグラウンドならではのルール上、常に水面下で密かにパスされており、決してダイレクトではなかった。先人たちは社会というフィールド上で、ギリギリのラインを見定めては、核にしっかりとしたメッセージ性を込め、適格且つクールにその貴重な情報を命をはって次の世代にパスしてきた。それゆえ、パスを受ける側は、常時受け入れ態勢を整えておかねばならないはずだ。先人が出したパスに体が反応するならば、その核に暗示されているメッセージ性を紐解いていく為に、自身でじっくりとルーツを掘り下げていき、確かな教養と感覚を自身の経験を通して、時間をかけ、磨き、より的確にパスを受け取る必用性が受けてには課されている。
HIPHOPが40年という短い歴史の中で継承され、進化し、世界的カルチャーにまで確立されてきた故は、これまでの受動、能動関係がしっかりと整っており、核を正確にパスし続けることが出来たからではないかと私は考える。そして、その核というものが人間のルーツであり、冒頭で語った人間の奥底に眠る本来のエナジーを引き起こす大事な情報源という風に繋げる事が出来るのではないだろうか。
では、現在シーンはどうであろうか。
HIPHOPが進化し続けていく為の受動、能動関係はしっかりと整っているだろうか。いや、HIPHOPシーンだけでなく、冒頭で語ったコーヒーなど、ルーツを持つもの全てに共通するシーンにおいて、果たして先人からのバトンは正確に渡っているだろうか。私の頭の中でイメージする光景から語らせてもらうと、資本主義の世界、いわゆる現在社会という土壌には、資本という概念で支配されたセメントによって、その土壌は隅々まで固定されてしまった上に、余計な肥料で不自然に成長してしまっている気がしてならない。現在の状況が続くとすれば、咲く花も咲かない未来の光景が私の頭には広がっている。こうは言っているものの、どうせ人生をするなら明るい未来を想像していきたい。
だとしたら、今回取り上げたTBOという組織のように、私たち1人1人は、現在社会という逃げ場のないフィールドで何らかの形で意識的に動かねばならない。そしてその動きが、現在の世代にふさわしいHIPHOPなのではないだろうか。先人が命がけで張り巡らせた根っこから花を咲かせるのは今私たちの宿命と言えるであろう。1杯のコーヒーから入り込み、自身の偏見でだらだらと綴らせてもらった退屈なお話から、私自身また1杯のコーヒーで現在社会に引き戻されたのであった。

Writer / g.g
we are one. peace.