エミネムの歌詞から探るもう一つの人格、スリムシェイディ?
2018.11.18

2018年にリリースされたアルバム『Kamikaze』でことごとく最近の若手ラッパー達をdisし、最近再びHiphopシーンの話題を掻っ攫っている男、Eminem(エミネム)。2000年代以降で最もラッパーとして成功した人物と言っても過言ではなく、自身の半自伝的映画「8mile」のヒットもあり、日本でもその知名度は圧倒的。
Eminemの特徴はそのとにかく強気で尖った性格と生き字引きのようなボキャブラリーから繰り出されるライム。全米で1000万枚以上も売れたメガヒットを持ち、「Rap God」と呼ばれています。もはや説明不要の超人気ラッパーですが、曲はもちろん知っているけどなんでそんな人気なのかまでは知らないわ、って方のためにキャリア初期の作品からEminemの人となりの一部を簡単にご紹介。
「スリム・シェイディ」というオルター・エゴ
「The Real Slim Shady」は2000年にリリースされた彼のデビュー2作品目。『The Marshall Mathers LP』の一曲。この曲のタイトル「Slim Shady」というのがEminemを知る上での一つの重要なキーワード。Eminemには自身の中にもう一人、狂気のピエロのような人格を飼っているというコンセプトがあり、その名前が「Slim Shady」です。Eminemは怒りに満ちた鋭いライムと平行してコミカルな表現をよく取り入れています。
「The Real Slim Shady」でも最初にアナウンスのような声で
"Will the real Slim Shady please stand up?"
(本物のスリム・シェイディは立ってください)と謎の病院でスリム・シェイディを呼び出す謎の世界感からスタートしています。 しかし、このふざけたニュアンスがEminemのヒットにおける一つのポイントであったと言えます。黒人中心の文化であったHiphopのそれまでの雰囲気に風穴を空けるため、あえて白人ラッパーとしておもいっきり陽気にふざけたような振る舞いをしてみせたのです。
それに加えて基本的にSlim Shadyは全方面に喧嘩売りまくり。曲中ではウィル・スミスはDisしなくても曲が売れる。クソだ。とかクリスティーナ・アギレラがXXXをしゃぶるのがあーだこーだとかとにかくやりたい放題。実際に訴訟騒ぎも起こしています。とにかくこの行き過ぎた悪ふざけをしている人格が「Slim Shady」として、持ち前のラップスキルと合わさってEminemをとにかく話題に事欠かない人物にしてしまったのです。ちなみにこの「Slim Shady」のコンセプトはトイレの中で閃いたのだとか。語感の良さに加えて「Slim Shady」で踏める韻が次々と頭の中で湧いてきた事で、コレはイケる!と考えたのだとか。
帰ってきたスリム・シェイディ
そんなEminemですが、4年ぶりの2017年にリリースされた「REVIVAL」はあまりファンからの評価が芳しくなかったのです。それまでの過激さがキャラクターの一つとして受け入れられていたのですが、「REVIVAL」ではビヨンセなどのアーティストを客演として迎えるも、ポップになり過ぎたという評価を受けてしまいました。
Eminemも歳を重ねて丸くなってしまったのか・・・
Eninemがタダで終わるはずがありませんでした。
2018年8月、突如として新作「Kamikaze」をリリース!動画は『Kamikaze』に収録された一曲、「Fall」です。このアルバムでは若手ラッパーから「REVIVAL」を酷評したメディアや評論家などにまたもや全方面への口撃が再開!このアルバムに対してファンやメディアは口を揃えて「Slim Shadyが帰ってきた!」と喜びをあらわにしているわけです。そんな「Kamikaze」で再び人気を取り戻したEminem。これからの動きにも要注目です。

Writer / Taneda
平成初頭生まれ会社員。 趣味のブレイクダンスをきっかけにブラックミュージックに没頭。 なんやかんやあってjazzに現在傾倒中。