ヒップホップシーンの都市伝説 殺された2Pacが実は生きている?

2018.11.24

若くして亡くなったアーティストは時にその死をもって、より伝説的な存在に昇華する。カート・コバーンの自殺はロック好きの間では今でも語り草だし、チャーリーパーカーの演奏は数々のジャズプレイヤーが未だに最高の才能だったと評価している。最近のことで言えば、EDMのバリバリのトップランナーであったAviciiが2018年4月に亡くなり、世界中のファンにとって突然の訃報となった。彼らの活動期間はその死故に長くはなかったが、短期間でその才能を爆発させ、死後もその影響は広がり続けている。そんな夭逝のアーティストとしてヒップホップの中で今も尚語り続けられるアーティストの一人が2Pac。いわゆる”東西抗争”で亡くなった、言わずと知れた西海岸の正真正銘のスターだ。

レジェンドラッパー2Pacと西海岸のヒップホップ

2Pac


2Pacの人気は凄まじかった。彼が表現するリリックはストリートで感情が揺れ動く様を絶妙に表現し、当時のラッパーには珍しく女性賛美的な内容を取り上げた曲も多く、独自のラップスタイルを持っていた。高身長で鍛えられた肉体にはタトゥーがよく似合い、ルックスの面でも彼には強い魅力があり、西海岸の顔として俳優業にも手を出すほどであった。アフリカン・アメリカンとしてこれから時代を引っ張っていくはずだった2Pacは1996年、わずか25歳の若さで亡くなる。当時ヒップホップのシーンでは西海岸のデス・ロウ・レコードと東海岸のバッド・ボーイレコードという2大レーベルの間に大きな諍いがあった。そのデス・ロウ・レコードの顔が2Pacであり、ニューヨークから始まったヒップホップのカルチャーを西海岸のスタイルとして確立させた。

ヒップホップの歴史に残る東西抗争の被害者:2Pac

そんな東西の対立を象徴する1曲が「Hit’Em Up」



名指しでバッド・ボーイのアーティストを攻撃しまくっている。その中には東海岸のトップでもあったThe Notorious B.I.G(通称Biggie)の名前も出てくるのだが、Biggieもこの東西抗争の中で亡くなった人物の一人である。『2Pac greatesthits』のライナーノーツにも書かれている通り、過激なリリックも当人達が亡くなってしまったという事実を基にして聴くとどこか虚しく響いてしまう。2Pac自身はマイク・タイソンの試合を観戦した後、銃弾で撃たれてしまった。実際のところ犯人は不明のままのため、この事件に対して直接の関連があると断言はできないのだが、ヒップホップシーンにおける”東西抗争”の中での決定的な出来事だと広く知られている。そんな2Pacだが、死後も度々まだ実は生きているんじゃないか?という噂が飛び交っているのだ。

実は生きてる!?2Pacのオルター・エゴ

なぜ2Pacがまだ生きているという半ば都市伝説のような話が絶えないのか?熱烈なファンが未だに2Pacの死を受け止めきれず、彼を伝説として生かし続けようとしているのか?それとも数々の証言が彼の生存を有力説として強めているのか?事の真偽は全くを持って定かではないが、巷で飛び交っている噂のいくつかをご紹介したい。2Pacは晩年「マキャベリ」という別の名義を使って活動していた。このマキャベリという名前はイタリアの政治思想家、ニッコロ・マキャベリから引用したもの。

2Pacは服役中に読んだ彼の著書に影響を強く受けて、マキャベリというペルソナを新たに作り上げた。ニッコロ・マキャベリの政治書「君主論」の中で出てくる内容に「その者の死を偽装する事で、彼の敵を欺け」という有名な言葉がある。彼が亡くなる1996年の初めにリリースされた『All Eyez on Me』が初のマキャベリ名義での作品であったことと、死後わずか二ヶ月後にまたしもマキャベリの名義で『The Don Killuminati:The 7 Day Theory』が発表されたことはタイミングがあまりにも良すぎた。激化する東西抗争のさなか、まるで「君主論」の通りに2Pacが事態を収束させたかのような意図を感じざるを得ない。さらには事件から約20年が経過した頃には、当時事件に関わっていたという警官が2Pacから依頼を受けて死を偽装するために口止め料を受け取った、なんという話も飛び出した。実はキューバに住んでいるのだとか、マレーシアで隠居しているんだとか目撃情報のようなものも相次いで証言されており、2Pacの存在はまだまだ伝説としてファンを楽しませ続ける。事件が未解決のままであることも含めて、陰謀論さながらのこんな論説も広がっている。マキャベリ(Makaveli)は実はアナグラム。そこに込められたメッセージは「I AM ALIVE」だとか。

Writer / Taneda

平成初頭生まれ会社員。 趣味のブレイクダンスをきっかけにブラックミュージックに没頭。 なんやかんやあってjazzに現在傾倒中。