ジャンルを問わないトラックメイカーMadlib。ジャズとヒップホップの融合とは?
2018.11.26

ヒップホップシーンでもアンダーグラウンドな立ち位置から実験的なトラックを作り出す男、Madlib(マッドリブ)。
ジャズの大本営、Blue Note Recordからアルバムを発表するなど、そのトラックはジャンルを問わず高い評価を得ている。
天才ビートメイカーJ Dillaの相棒
Madlibはカリフォルニアで生まれ、家族も全員ミュージシャンであったため、幼い頃から厚く音楽に触れ合ってきた。Madlibが最も影響を受けた存在と言っても過言ではないのが天才トラックメイカーのJ Dilla。晩年のJ Dillaと最も多くの時間を共にしたのがMadlibであり、2人はJaylibというユニットを組んで、自宅の地下室のスタジオでトラックの研究をし続けた。トラックに対しての尋常でない興味の深さが2人を惹きつけ合い、斬新なサウンドを多く生み出した。
Jaylibとして制作した1曲「The Heist」メッセージ性の強いアニメーション映像がいかにもディラっぽい、少しジャストからずらしたビートとマッチして独自の世界観を作り出している。 ちなみに映像の中で登場する全身黄色で葉巻を加えた。
このキャラクターは宇宙人のようなヘリウムガスを使った高い声で喋っているのだが、Quasimoto(カジモト)という名前が付いている。 この時々表れるQuasimotoの声が実はMadlibのもの。 Madlibが持っている別人格、別キャラクターとしてこのQuasimoto名義での作品も発表している。
ジャズレーベルから出すヒップホップのトラック
Madlibのトラックの価値を決定付けた作品が2003年Blue Note Recordからリリースされた『Shades Of Blue』。 Blue Noteはジャズシーンにおける一大レーベル。 MadlibはBlue Noteからその全音源を預けられて、自由にトラックを作成する権利を与えられた。3度の飯よりトラックを作成するのが大好き、というタチのMadlibにとってはこれ以上ない話だった。 そして贅沢にJazz作品がサンプリングされたアルバム『Shades Of Blue』が完成した。
そんな「Shades Of Blue」の四曲目、「Mystic Bounce」。この曲のサンプリング元はRonnie fosterの「Mystic Brew」。Madlibの手によって「Mystic Brew」はそのもじられた表題の通り、跳ね上がったビートが強調され、より遊び心満載の曲調に転換されている。
サンプリング元の音楽は?ジャズファンクから!
主にオルガン奏者として活躍したRonnie Fosterの魅力はなんといってもその軽快なジャズファンクサウンド。オルガンの音色の響きが聴き心地良く、彼らしくファンキーな部分を残しつつ、コーヒー片手にゆったりと聞ける心地良さがナイスな一曲。 この曲は他のヒップホップのアーティストからも人気のある曲。以前に紹介したA Tribe Called Quest(ア・トライブ・コールド・クエスト)の「Electric Relaxation」もこの「Mystic Brew」をサンプリングしている。『Shades of blue』の話に戻すと、Madlibがこの作品で発表したトラックの人気を受けて、発表元のBlue Noteからサンプリングの元ネタ集となる「United (Souces for Madlib's Shade's of Blue)」が発売されている。ドナルド・バードのような定番のジャズアーティストからハービーハンコックを代表とする革新派のジャズまで収録されており、Madlibがアルバム制作に当たってジャズサウンドを掘りまくった姿勢が伺える。 ヒップホップのアーティストからもよく話題に上がるジャズアーティストの作品がふんだんに盛り込まれているので是非チェックして頂きたい。