伝説のジャズアーティスト ビリーホリデイ『奇妙な果実』とは?

2018.12.01

ジャズの歴史上でも重要な女性シンガーがBillie Holiday(ビリー・ホリデイ)。ジャズシンガーとしての一つの完成形を提示した彼女の生き様はまさに波乱万丈。今回はビリーホリデイの作品の中でも名盤と名高い「奇妙な果実」をご紹介。

奇妙な果実とは

1939年当時、「カフェ・ソサエティ」に出演していたビリー・ホリデイに詩人のルイス・アランが自作の歌詞を持ちこんだことから"奇妙な果実"の歴史は始まる。 ビリー・ホリデイはこの2年前の1937年に父親を亡くしている。テキサス州ダラスで肺炎に罹ったホリデイの父親は人種差別による治療の遅れにより急死しており、アランの書いた衝撃的な詩はホリデイ自身の深い悲しみを強く発現させた。
イントロこそ寂しげなトランペットサウンドから始まるこの曲は、決してただ悲しげに歌い上げられるているのではない。むしろホリデイ自身の歌声は厳かで、はっきりとした意志が込められているようにも感じられる。その強烈な歌詞の内容から、”奇妙な果実”は放送禁止の扱いを受けていた。黒人差別に対する情景描写は公共電波ではタブー視されてしまったのだ。しかし、この事実は黒人の人権擁護団体を怒らせた。収まらない放送局への抗議は、それ自体が格好のニュースとなって人々の関心を引き寄せ、当時のジュークボックスではひっきりなしにホリデイの歌声が流れ続けていたそうだ。セールス面で意図して行ったわけではないので、今で言うところの炎上商法ではないが、この問題作をリリースしたコモドア・レコード社の収入基盤は、返ってこの曲によって安定したものとなった。エラ・フィッツジェラルドやサラ・ヴォーンと並んで女性ジャズシンガーの御三家として後世に偉大な影響を与えたビリー・ホリデイ。ジャズ界やPopsの歌手に与えた影響はもちろん、ロックバンドのU2がトリビュートソングを発表したり、ブラック・アイド・ピーズがコカ・コーラ社のCMでビリー・ホリデイへの賞賛を歌うなど、ジャンルの壁を超えて愛され続けている。

時代を超えた「奇妙な果実」

その中でも比較的近年、"奇妙な果実"をカヴァーしたアーティストのアルバムを二枚紹介したい。  まずは1995年にリリースされたカサンドラ・ウィルソンの「New Moon daughter」。優れたJazzシンガーとして知られている彼女のこのアルバムには、Jazzにこだわることなく、ロックバンドのカヴァーも多く吹きこまれている。このアルバムの冒頭が”奇妙な果実”から始まり、独自の歌声で感傷的に歌声を響かせている。
 
もう一つは、オランダ出身のトレインチャが2003年にリリースした「Strange Fruit」。その表題の通り、内容はホリデイの愛唱曲で固められており。彼女のシンガーとしてのルーツがビリー・ホリデイによって築かれたものであることを存分に表現した内容となっている。 時代を超えて愛される名作、「禁断の果実」。きっと今聴いてみるからこそFreshに感じ取れるはずだ。

Writer / Taneda

平成初頭生まれ会社員。 趣味のブレイクダンスをきっかけにブラックミュージックに没頭。 なんやかんやあってjazzに現在傾倒中。