あのラッパー達による"ビーフ"が無ければ現代のヒップホップは無かった。歴史に残る争い"The Bridge Wars"とは?

2018.12.06

ヒップホップ音楽の誕生秘話と歴史

「The Bridge Wars」 とは、80年代半ば~90年代初めに、"ヒップホップ音楽はどこで誕生したのか"ということを巡り、ラップを通して対立し合った歴史的な出来事である。東海岸、ニューヨークを舞台に突如始まったこの対立は、90年代の"ヒップホップ黄金時代"に活躍する数々のラッパーに影響を与え、ヒップホップ史における"ビーフ=対立"の定義を世に広め、当時のヒップホップシーンを大いに盛り上げた。

ビーフ:The Bridge Wars の主役となったラッパー達

それは南ブロンクス代表、Boogie Down Productionの"KRS-One"。クイーンズブリッジ代表、Juicy Crewの"DJ Marley Marl"と"MC Shan"。

クイーンズのラッパーからの先制攻撃

事の発端は、1985年。Marley Marl とShanの2人がリリースした「The Bridge」で"ヒップホップはクイーンズブリッジで始まった"という内容を世に出したことがきっかけとなる。また、彼らはB面の「Dub Biter」で、当時人気が出てきたクイーンズ出身のLL Cool Jを"Marley Marlのビートを盗んだ"とディス。(後に和解。LL Cool Jの4作目のアルバム『Mama Said Knock You Out』(1991)のほとんどのトラックをMarley Marlが手掛けている)この一枚のレコードがあの男の逆鱗に触れることに、、


南ブロンクスのラッパーケアレスワンの反撃

So you think that hip-hop had its start out in Queensbridge,If you popped that junk up in the Bronx you might not live”・”ヒップホップがクイーンズブリッジで始まっただ?そんなことをブロンクスでぬかしてみろ、生きて帰れないぞ”これは黙っちゃいれないと、すかさずブロンクス代表のKRS-Oneが「South Bronx」(1986)で彼らにBeefを申し出る。彼の怒りは、B面のLL Cool Jに対してのDisにまで反応するほど。”Instead of trying take out LL, you need to take your homeboys off the crack”・”LL Cool Jをステージから引きずり下ろす前に、お前の周りの仲間にクラックを止めさせる方が先だろ”ここからヒップホップの"Beef"史が始まっていく。


売られた喧嘩は返す≒ヒップホップの歴史に残るビーフへの発展

南ブロンクスからの猛攻撃に対して、Juicy Crewで反撃。

「Kill That Noise」(1987)


待ってました!と言わんばかりの速さで同年に「The Bridge Is Over」で猛反撃。外部のMr.Magic、Roxanne Santeも含め、Juicy Crew全体をディスりまくる。この曲は、レゲエとラップの融合を一番初めにレコーディングした事で有名である。


ニューヨーク全土に広がるラッパー達のディス

この反撃の後、事件は起こる。BDPのKRSの右腕、DJ Scott La Rockが銃殺される。しかし、対立は終わることはなく、、「The Bridge Is Over」で侮辱されたと、Roxanne Santeが「Have a Nice Day」(1987)で反撃。


"Beef"の盛り上がりは、冷めることはなく、次第にニューヨーク全土へと広がっていく。ブルックリンからBDPを援護した、

M.C. Mitchskiによる「Brooklyn Blew Up the Bridge」(1987)


クイーンズブリッジのために立ち上がったButchy Bというラッパーの「 Beatin Down KRS」(1988)


ビーフの終焉と後のヒップホップ界を担うラッパーに残した影響

時は過ぎ。90年代に入ると、ようやくほとぼりが冷めていく。しかし、この"Beef"は、ヒップホップファンや参加者には忘れられる事がないヒップホップのクラシックとして人々の記憶に残っていった。後のNas2Pacなどの"黄金世代"と言われる多くのラッパーに影響を与え、「The Bridge Wars」というフレーズは多くのラッパーがよく引用するようになり、"Beef"の代名詞として今も語り継がれることとなる。ところで、気になる勝敗はというと、、KRS-Oneはその後もレペゼン ブロンクスで、成功に成功を重ね、MC Shanは90年代に入り人気が衰退。KRS-Oneの「The Bridge Is Over」に対しての直接的なアンサーがなかったことなどから、「The Bridge Wars」はKRS-Oneの勝利となった。

また、KRS-OneとMarley Marlは2007年に公式的に不戦を公言し、共同制作のアルバム「Hip Hop Lives」をリリース。

Hiphop史に残る歴史的なアルバムという形で、「The Bridge Wars」は幕を閉じた。


Writer / g.g

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