ラッパーGuruが広げたヒップホップが持つ音楽の可能性とは?ジャズ界の大物アーティストを招いた名作。

2018.12.07

DJ Premierとタッグを組んだグループ"Gangstarr”でヒップホップシーンに多大な影響を与え続けたGuru(グールー)。2010年に病に倒れてしまったが、Guruがその人生を通じて発表し続けた音源はヒップホップシーンに新たな価値を付与し続けた。謹んでご冥福をお祈りする。

ジャズ界の大物アーティストを招いたヒップホップ音楽『Jazzmatazz』

Gangstarrとしての活動はもちろん、彼の作品を語る上で欠かせないのが『Jazzmatazz』シリーズ。ドナルド・バードやハービーハンコックなどのジャズ界の重鎮たちを客演として招き、ヒップホップのクラシックなビートに存分にジャズの味付けが施された文句なしの名作だ。


Guruが切り開いたヒップホップの未来はジャズ音楽との融合だった

Guruが試みたのは「ジャズとヒップホップの融合」だとしばしば称される。その形はヒップホップの世界にジャズの素晴らしいアーティストを呼び込むことだったのか?それとも動きのある生音のトラックに絶妙に通じ合うラップのアプローチだったのか?あるいはその両方がGuruの成し得たことなのか?そもそもヒップホップの音楽においてサンプリングとしてジャズの音源を用いることは初期の時点で既に定番だった。ヒップホップはその黎明期から既にジャズやファンクの影響下にあり、その意味においてヒップホップとジャズの距離は本来かなり近いところにあるはずだが、Guruの試みはここから更に1歩踏み出したところにあった。

サンプリング手法で切り開くジャズとヒップホップの新たな音楽の形

ジャズのフレーズやドラム、サックスなどの”音”を切り取ってサンプリングし、ビートを作り出したヒップホップトラックにジャズの”音楽”としての息吹を吹き込んだことにある。Guruはヒップホップのビートのループ感とジャズの繰り返されるテーマの中に発生する共通項を巧みに操った。『Jazzmatazz』で表現された物は、音楽的な手法としてはハードコアなヒップホップ。それまでのGangstarrとしての活動と同じ分脈を保ちつつ、生音のジャズが持つ人間的な息遣いと独自の揺らぎを取り込んだサウンドだった。

『Jazzmatazz』のスリーヴにはGuru自身の言葉としてこんなことが記載されている。

I was leery. It had to be done right. My main concern was to maintain my street credibility and to represent the hardcore rap crowd because they've got me to where I am now.

「とにかく注意深くやった。正しい手法でやらなくてはならなかったんだ。自分の中で最も重要だったことは、ストリートで得た信用を保持することとハードコアなラップミュージックをレペゼンすることだった。何故ならばそれが自分の今を作り上げた物だったからだ。」

Guru自身、サンプリングを基盤とするヒップホップのトラックを生音にて制作することを安易に考えた訳ではなく、かなり慎重に取り組んでいたことが伺える。Guruが慎重に、それでいて多くのアーティストを巻き込みながら大胆に踏み出した1歩はヒップホップが持つ音楽の可能性を大きく広げるに十分な価値があった。

Writer / Taneda

平成初頭生まれ会社員。 趣味のブレイクダンスをきっかけにブラックミュージックに没頭。 なんやかんやあってjazzに現在傾倒中。