プロデューサー Flying Lotusの名曲『You're Dead!』が描きだす世界 ジャズ編

2018.12.17

Flying Lotus - Coronus, The Terminator


Flying Lotus(フライングロータス)が2014年のアルバム『You're Dead』で表現した世界はあまりにも強烈だった。前回はKendrick LamarとSnoop dogの新旧西海岸のキングがフィーチャーされた曲をピックアップした。本当に新しいこと、新しい音楽にチャレンジする姿勢をとにかくハイレベルに表現した『You're Dead!』のさらなる魅力に迫っていく。

ジャズアーティストの巨匠ハービーハンコックが参加した1曲

『You're Dead!』のプロジェクトを主体となって動かしたのはFlying Lotusともう一人。Thundercat(サンダーキャット)だ。Thundercatはテクニカルな早弾きスタイルのベースで高校生の時には既に注目を集めていた天才ベーシスト。彼もまたジャズを本体的な活動の軸としつつもヒップホップR&Bのアーティストとの活動を好み、その名前もErykah Baduに名付けられたニックネームだ。Flying LotusとThundercatは『You're Dead!』をジャズの新しい境地としての作品として捉えており、そこに共感したJazz畑の数々の名手のプレイも作品の魅力になっている。中でもHerbie Hancock(ハービー・ハンコック)の参加は象徴的だ。


ジャズシーンにおいてマイルス・デイヴィスと並んで、いち早く固定概念に囚われない前衛的なスタンスを取り続けてきたハービー・ハンコックは70歳を過ぎて尚、まだ挑戦し続ける。今までの彼の歩みからすればFlying Lotusと感性がマッチする部分があるということは十分に頷ける。しかも声をかけたのはハービー・ハンコックの方からだったのだという。「Moment of Hesitation」はハービー・ハンコックが参加した1曲であり、この1曲の中でもまるで別人かのように表情を変えて多彩なプレイを披露している。

こだわりぬいたビートの製作スタイルとジャズ音楽の融合

『You're Dead!』においては多くのジャズプレイヤーの演奏がビートミュージックの世界をよりジャズ的に大きな息遣いを感じさせる仕上がりにさせている。しかしこのジャズミュージシャン達の演奏はセッションを通じたものではなく、その多くは個別にレコーディングを行い、バンドとして同時に演奏することはほとんどなかった。個別の演奏はFlying Lotusによってデザインされ、より複雑で高度なレイヤードが行われて1曲1曲が製作されている。中でも基軸となるドラムのサウンドのレコーディングはかなり特殊で、アルバムを通じて、4人の気鋭のドラマーを楽曲によって使い分けている。それでも『You're Dead!』の予測できないながらも一定の世界感が担保されている大きなポイントが、この4人のドラマーに同じドラム・キットを使用させたことにある。それぞれドラミングの特徴は違うものの、この製作における一つのこだわりが作品のメッセージ性を複雑ながらもより確固たるものとして保持させているのだ。


死を感じさせるだけの音楽ではない。ジャズを楽しむ純粋な気持ち

クレイジーでインパクトある楽曲がずらりと並ぶ『You're Dead!』だが、Flying Lotus本人としては、ただ死の恐怖を感じせせるようなアルバムの製作を行った訳ではない。あくまで死んだ瞬間から始まるストーリー、というのが本作のコンセプトであり、むしろ退屈になってしまったジャズをもう一度楽しめる音楽にしたいという非常に前向きな気持ちから製作に当たっている。突飛で不確かな音楽的な展開は死後の世界にはきっと誰もが予測できないようなことだらけのはずだ、という観念から成り立っていて、そのコンセプトが全曲通じて繋がりあっているのだ。最後に『You're Dead!』の中の1曲の強烈なビデオをご紹介。(グロテスクな内容が含まれるため閲覧注意)


すみませんが私はバッチリ不安と恐怖を感じました。

Writer / Taneda

平成初頭生まれ会社員。 趣味のブレイクダンスをきっかけにブラックミュージックに没頭。 なんやかんやあってjazzに現在傾倒中。