現代ヒップホップシーンに衝撃!LAのダークホース、ラッパー"Duck Wrth®"現る。

2018.12.18


ラップスタイルはまるでファンクとヒップホップの融合

Andre3000とPharrellの間に産まれた”と自身で公言し、ファンクに根付いたヒップホップ、独自のスタイル、そしてアーティスティック性を惜しむことなく魅せつける、ここ数年で話題になっている男、Duck Wrth®(ダックワース)。背伸びすることなく、あるがままの彼を表現しているミュージックビデオは、まるで一本の映画を見ているような感覚に陥る。まずは世界的に称賛されているこちらの「MICHUUL」(2017)を観て頂きたい。ファンキー且つ繊細な彼の世界観にあなたも魅了されてしまうだろう。

現代ヒップホップシーンを離れ独自の音楽性へ

1988年、カリフォルニア、サウスロサンゼルスで産まれ育った、ラッパー兼シンガーの彼 Duck Wrth。アカデミー・オブ・アート大学でグラフィックデザインを学んだ彼の音楽キャリアは2012年頃にスタートし、当時は音楽配信サイトで自身の楽曲を提供しつつ、自分の求める音楽を模索し続ける毎日であった。アートワークのすべてを手掛けたMixtape「Taxfree V.1」(2014)、そしてプロダクションチームThe Kick Drumthとのコラボレーションアルバム「Nowhere」(2015)は、話題にはなるものの、彼の望む結果には終わらなかった。

【素晴らしくクリエイティブな音楽を作っているはずなのに、なぜ評価されないのか】

彼はこの頃から現在の音楽シーンというものに疑問を抱き始める。

以前から平行して行っていたグラフィックデザインや広告、衣料関係の仕事に専念しようと決意した時期もあったと語る彼。しかし、音楽は彼を離さなかった。そして、現在のヒップホップの位置に長年嫌気がさしていた彼は、”もう知るか”と自身で踏ん切りをつけ、自分自身の持つ音楽性にのみフォーカスを当て始めた。

(自身で手掛けた「Taxfree V.1」のジャケット)

(The Kick Drumsとのコラボレーションアルバム『Nowhere』より「PSYCHO」)


現代ヒップホップシーンに回帰。ダークホースラッパー現る!

そして2016年、彼にスポットが当たりはじめる。ニューアルバムを製作する為に、ハリウッドの豪華なレコーディングスタジオに通いながらも、荒廃した地元、サウスロサンゼルスへと帰宅する毎日を過ごしていたちょうどその頃、ふと、その地形的なコントラストが、彼の視点と音楽性をネクストレベルに導いていることに気づく。”あの期間に経験した質感が、ネクストレベルのヴァイブを作ったと思う。僕は心地の良い環境で、クソみたいな音楽を作りたくない主義でね”そしてついに、洗礼された彼自身の化身と言えるアルバム『I'm Uugly』(2016)が完成された。同作はこれまでにない程の高い評価を得、続く『An Extra Uugly Mixtape』(2017)では、世界中から称賛の嵐が起きる。現在の音楽シーンに新たなダークホースが誕生した瞬間であった。それを機に、大手レーベルとの契約、そしてAnderson Paakの北米ツアーの前座を務めるなど、着々と音楽キャリアを積んでいき、今に当たる。



人間臭さが現れるリリックで伝えたい意味

ここで、彼のリリックやタイトル名でよく目にする”Ugly”について少し説明したい。本来”醜い、見苦しい”という意味を持つこのワードであるが、彼自身、この言葉をこう捉えているという。"僕にとっての「Ugly」という言葉はフィーリングを意味している。例えばドープな音楽を聞いたら、人は しかめっ面になって、その音楽に入り込まないかい? それがまさにUgly Feeling(アグリーフィーリング)なんだよ"、続けて彼は、”「Ugly」とは正直な人間性を表す言葉でもあるんだ。人はよく、落ち込んだりした時、それを隠したり、何でもないように装ったりするけど、それって本当の感情じゃないと思うんだ。恐れずにその時の感情を隠さない、自分に嘘をつかないことが重要なんだよ。

”人間臭さ”というのが、彼のアーティスティック性を読み解く鍵なのかもしれない。



性に対するコンプレックスと克服

スカートを履く男としても有名な彼だが、『An Extra Uugly Mixtape』の第6曲目にも収録されている「BOY」から、彼の性への着眼点を追っていきたい。


父の蒸発により、幼き頃から母や姉等、女性に囲まれながら育った彼。そこで経験したのは女性が持つエネルギーだと彼は言う。男性とは一体何か。女性とは何なのか。セクシャリティについての疑問が彼の頭を渦巻き、幾度もの自問自答の末に、ようやく彼の中で一つの答えが出た。【性に囚われると、色んなものがダメになる。】"男性とはこうあるべき、女性とはこうあるべき、という蔓延した固定概念により、人は自身の持つ可能性に線引きをしてしまっている。男性のエナジーを持つ女性はたくさんいるし、女性のエナジーを持つ男性もたくさんいていいはずだ。"と語る彼。

こうしたアイデアから「BOY」という曲が生まれたそうだ。”Let’s meet between the gender, now wouldn’t that be awesome?”・”性別の狭間で会ってみようよ、それってものすごくヤバくないか?”というラインでも登場する”between the gender”というのは、この曲においてのキーワードでもあり、"相手の立場に立って考えることが出来れば、すべての物事はうまくいき、もっと平等な世界が広がっていくのではないか。"と彼は主張している。

MVの、姫君が男性、救世主が女性という立場逆転の設定は、いかにも彼が思うジェンダー観を上手くあらわしている作品に仕上がっている。ファッションとして必然的にスカートを履く彼の”性”に対する姿勢は、実に考え深いものである。


現在音楽シーンに新たな地位を確立させた彼だが、まだまだ到達しなければいけない高台は多いと言う。自分の事を自慢する事が苦手だと語っている彼は、現在のソーシャル・メディアへの不信感について、この様に述べている。

"あれもこれもやって、こんなに俺はすごいんだぜ。俺を見ろ。といった、音楽とはかけ離れた所で競っている人たちのやり方とは、違うアプローチの仕方でシーンに挑んでいく必用性がある。今後ソーシャルネット・メディアで自身の魅力を伝える自己流の方法を常に模索しているところさ。”

近頃のシーンに対して離れた所で戦っている彼だが、つい先日リリースされた新曲、「Soprano」のMVは、現在のトラップシーンに対しての彼なりの皮肉らしきものが感じ取れる。LAのダークホースの今後の動向は、目が離せないものだ。


Writer / g.g

we are one. peace.