US3 ”ロンドン発のド直球JazzサンプリングHip Hop”

2018.12.24

US3 - Tukka Yoot's Riddim


Jazzの音源をトラックに活用したラップミュージックはハードコアで打ち込みの強いビートとはまた一風変わった独特の聴き心地を生み出す。本場アメリカのラッパーやグループで言えばA Tribe Cold QuestQ-tipや、GangstarのGuruといったアーティストがJazzyなサウンドメイクに定評がある。今回はアメリカから離れ、イギリスのロンドンを中心に活動するラップグループ、US3(アススリー)をご紹介。ロンドンが拠点のUS3もまたJazz Rapの先駆者と呼べる存在の一つだ。JazzサウンドをサンプリングしたHip Hopに王道というか、これぞJazzy Hip Hopだ!という明確なポイントはそもそも存在しないはずだが、US3のトラックは一聴してJazz Rapのど真ん中、と感じさせるような聴き心地が大きな魅力だ。

Blue Note Recordからの全曲サンプリング使用OKのバックアップ

US3の楽曲の特徴としてはフレーズごと大胆に切り取ったJazz音源のサンプリングを行なっているものが、多いためJazzの成分がかなり多めにトラックに残っているところ。そのアプローチはどちらかと言えば、Jazzサウンドの上にラップを味付けとして乗せたような構成のため、Hip Hopリスナー以外でもとっつきやすく、良い意味で聴き流しやすいところが魅力。彼らのJazzy Hip Hopがド直球であることの秘訣が、Jazzレーベルの大本営、Blue Note Recordから全曲のサンプリング使用の許諾を得ていることにある。US3としての活動当初、 サンプリングの許可を取ることなく楽曲製作していたところ、Blu Note側から連絡が入り、その際に直球にサンプリングして良いか尋ねたのがきっかけだったとうもの。その裏付けあってこそのサンプリングがJazzとHip Hopの融合への挑戦を加速させた。

Blue Note Recordイチのヒット曲にもなった「Cantaloop」

そんなUS3を代表する1曲が「Cantaloop」


日本のテレビCMにも採用されたこの1曲は大ヒットしたファーストアルバム『Hand on the Torch』に収録されている。「Cantaloop」のサンプリング元がハービー・ハンコックの「Cantaloupe Island」。US3のメンバーがロンドンのジャズ・フェスティバルでハービー・ハンコックやパット・メセニーといった豪華演奏陣が「Cantaloupe Island」をファンキーにプレイしている様を見たのがきっかけだったとされている。


こちらが元ネタの「Cantaloupe Island」。元々のサウンド感がかなり色濃く残っていることが1聴してわかる。ハービー・ハンコックの作品でも代表曲とい呼べる1曲のため、どこかで一度は耳にしたことがあるはず。これだけ、はっきりとしたJazzサンプリングにはUS3というグループ名にも込められたメッセージが入れ込まれている。彼らがUS3という言葉に込めた3つの要素というものが、一つはJazzを現代に伝えて行きたいというもの、2つ目にHip Hopという若い音楽を取り入れ、新しいものを作り出していくこと、3つ目が若いJazzのミュージシャンをフックアップしていくことである。90年代前半にブレイクしたUS3だが、その後もかなりコンスタントにアルバムを発表し続けた息の長いグループだ。アルバム全曲通しても聴き疲れしない、心地良いサウンドはどのアルバムにも共通している。


Writer / g.g

we are one. peace.