シーンに新たなレシピを提供し続けるベテラン ビートメイカー”Guts”。

2019.01.24

80年代にヒップホップと出会って以来、その魅力に今でもとりつかれ、世界中の音楽を自身の経験から滲み出た感性で様々なムードを表現するフランスのビートメイカー兼プロデューサーの”Guts(ガッツ)”。元々は、90年代のフランスのアンダーグラウンドを代表する5人組のヒップホップ・グループ” Alliance Ethnik(アリアンス・エトゥニック)”のメンバーの1人でもあった彼だが、当時の経験が今の自分に全て繋がっていると語る。Alliance Ethnikといえば、プラチナ・ディスクを獲得したファーストアルバム『Simple & Funky』で知っている方も多いと思われる。中でも同アルバムに収録されている「Respect」はフランス史上最も売れたシングル1000にランクインしている、彼らの代表曲だ。A Tribe Called Quest、D’Angelo、Erykah Badu、 De La SoulThe RootsCommon といったビッグネームと肩を並べる程のフランス、パリが誇るヒップホップグループであった彼らは99年に解散するものの、その芸術的音楽性は、後のヨーロッパのヒップホップシーンに大きな影響を与えた。


”8年間の葛藤”

元々、レコードカバーの「作曲・製作」の下に隠されていた彼の名前は、Alliance Ethnikを始め、Big RedやSvinkelsのサウンドトラックをトリミングすることにより、ビートメーカーとして名声を密かに集める存在であったという。そんな彼がソロプロジェクトで動き出したのは2007年にリリースした自身初のソロアルバム『Le Bienheureux』。”あの Alliance EthnikのメンバーであったGutsがビートメイカーとして動き出した。”と、瞬く間に話題となったが、99年の解散からソロ活動までの約8年間は、自身との葛藤の期間であったと語る。解散後、ヒップホップのメッカ、ニューヨークで大きなチャンスを掴むためにフランスを離れようと長い間考えていた彼だが、自国への愛ゆえに、結局フランスに留まり、あらゆるアーティストへ楽曲提供等を行っていた。年月が過ぎれば過ぎる程、道に迷っていく自身の気持ちに気づき、ある日彼は自身のソロアーティスト活動を形にする為に、地中海西部に位置するスペインのイビザ島へ移住する覚悟を決め、その決断は結果として大正解であったと彼は当時を振り返り語る。移住後リリースしたアルバム『Le Bienheureux』 に収録されている「And the living is easy」というタイトル名は、直訳すると「気楽に生きていける」と解釈でき、移住し、心が晴れた当時の彼の心境が楽曲から伝わってくる一曲だ。

”相棒Mambo”


イビザへ移住した彼は、自主レーベルPura Vida Musicを友人のグラフィック・アーティストMamboと設立し、セカンドアルバムの製作にあたった。自身の音楽的なアイデンティティに似たビジュアルアイデンティティを持つMamboは、膨大な作業量をこなさなければいけない彼にとって、必要不可欠な存在であったという。また、Gutsの楽曲といえばユニークなグラフィックデザインでも印象的だが、彼がソロ活動を始めてから今日まで、シングルからアルバムまで、楽曲のほとんどのデザインをMamboが手掛けている。まさに阿吽の呼吸が取れた相棒と言える人物である。イビザ島からの恩恵である、平和、エネルギー、太陽、海など、文句なしのオーガニック・ヴァイブスから作り上げられたセカンド・アルバム『Beach Diggin』は、称賛の嵐を呼び、今現在Vol.5までシリーズ化するほどの人気を誇る、彼らの定番ラインとなっている。


”Contrast”

2013年にリリースされたEP『Django』。こちらの作品は、アメリカの名監督、Tarantino(タランティーノ)が2012年に公開した大ヒット西部劇”Django Unchainted”(日本語版:ジャンゴ 繋がれざる者)のサントラをリミックスしたもので、サントラとはまた違う楽しみ方ができる傑作である。


元々、暴力的シーンを頻繁に描写するタランティーノ監督の作品を全く好まなかった彼だが、この映画は、音楽、映像どれをとっても優れている、と高く評価している。その後、Tarantino監督の映画にはユーモアとダークの二面性が上手に共存している事に気がつき、自身の音楽のコンセプトにもおいている”コントラスト”をTarantinoの映画から影響を受けていると語る。



”Hiphopへの愛”

ソロとして軌道に乗り始めてきた2014年、彼は長年心に留めていたニューヨーク行きを遂行する事に。MPC1つを抱えた彼は、要求の厳しいヒップホップの本場で、Grand PubaやMasta Aceなどの伝説と共にレコーディングのチャンスを手にし、高速ラップのTanya MorganやジャズマンのLeron Thomasなどとのスタジオセッションも達成し、より洗礼された彼のアルバム『Hiphop After All』が誕生した。ニューヨークでのヴァイブスは、7年前の”Hiphopへの挑戦”ではなく、彼の25年間もの”Hiphopへの愛”へと変化しており、その結果、最高傑作と言える作品を生み出したのだ。


”永久的探求心”

彼の現在の地位を確かなモノとしたのは2016年。音楽への永久的な探求心を再度エレクトロファンク、アフロディスコ、スペースジャズにベクトルを向けなおし、Hiphop After Allのライブバンドに、さらなるピースとなる、Tanya Morgan、Lorine Chiaを加え、より高波を求めた。奮闘の末にリリースに及んだアルバム『Eternal』は、シーンにはっきりとした彼の爪痕を残し、大型フェスへの出演依頼など、音楽シーンに彼の座を設ける結果を迎えた。



Hiphopを愛し、音楽への探求心が止まない、愛と平和を謳う音楽家Guts。世界中の音楽を求め、私たちが知らないスパイスを見つけては調合し、生み出していく、今後の彼のレシピにも期待していきたい。


Writer / g.g

we are one. peace.