狂気じみた努力を経て。シアトルの若手ラッパーDave B。

2019.02.26

今回紹介するのはアメリカのラッパー ”Dave B”。 Sango、Nacho Picasso、Jarv Dee、Shabazz Palaces、Aminéなどと同世代で、2016年リリースの『Punch Drunk』で一気に注目を浴びる。VansやThe North Faceの広告にも起用されるなど、アメリカを中心に彼のファンはとても多い。近日来日を迎えるMasego同様に、幼少期の多くを教会で過ごした彼だが、そこで培ったゴスペルの音楽性を武器に、ソウルフルかつジャジーにライムする姿は聴くものの心を震えさせる。

”努力”

今年で27歳とは思えぬ貫禄とグルーブで自身の音楽を表現する彼。そんな彼が音楽の道を本格的に歩みだしたのはを随分遅かったという。元々歌を歌う事が大好きだった彼は、小学校高学年で地元の友達と遊びでラップを開始。劇団の道を目指していたこともあり音楽はただの娯楽でしかなかった彼に転機が訪れたのは、15歳のクリスマスに姉から貰った一本のマイクであった。そして現在の彼があるのは、その後の狂気じみた努力の結果と言っても過言ではないだろう。

”ルーティーン”

音楽の道を歩むことを決心した彼は、Bandcampとフリーダウンロード素材で毎日楽曲制作に励んだ。昼にレコーディングし、夜にアップ。このルーティーンをひたすら繰り返し、1000曲以上を作りあげ、シカゴのステージで約2000回のフリースタイルライブを経たという。”当時はかなりストイックだった。そして寿司も異常な程に食べた。完全に狂っていたね、、。”と当時の自身を懐かしむ。

”1/3”

3本に1本当たったらいいや”の思いでストリーミングサービス上にUPした3つの楽曲の内、「Leaves」の一曲が彼自身の予想を上回る反響を呼び、『Punch Drunk』でシアトルの若手を牽引するアーティストまで躍り出た。その勢いで同郷のプロデューサーSangoの協力の元アルバム『Tomorrow』を作り上げる。同アルバムの2曲目に収録されているATCQ の「Find A WAY」から作られた「Help Me Find A Way」は私のオススメの一曲である。

”コンテンポラリー・ヒップホップ”

誰かは Chance The Rapper 、また誰かはBryson Tiller、SNS上ではAndre3000とFrank Oceanの子供等、スタイルが他のアーティストと被っていると、彼を中傷する声は未だに多いらしい。(実際私もそのアシッド・ラップと確立してしまったスタイルからChanceやシカゴのSabaを連想してした。)が、当の本人は全く気にしていないという。”ChanceやBrysonと言われても全く分からない。まず僕は自分の大事な音楽を他人と比較していないからね。言うなら、僕のスタイルはソウルフル且つジャジーなコンテンポラリーヒップホップスタイルと言えるかな。”と笑いながら他者の中傷を声援に変換。続けて彼は、”僕はただ音楽を愛しているだけだよ。”と、クールにインタビューに答えている。異常なほどに落ち着いた人格の持ち主に違いない。そんな彼のフェミニンな楽曲が詰まったアルバム『Peal』は、まさに大人のアルバムと言える作品に仕上がっている。


自分のセンスを信じる努力をする時代だよとファンに伝えている彼。彼の音楽の考え方や楽曲から、学ぶ事は非常に多いアーティストと言える。そろそろ日本の来日公演もあってはよさそうだが、いずれにせよ彼の来日情報は今後も日々チェックしていくだろう。


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Writer / g.g

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