まさに聴覚的プラネタリウム。アテネの謎 レーベル”FUNKYPSELI CAVE RECORDS”

2019.03.12

ギリシャはアテネを拠点とするFUNKYPSELI CAVE RECORDS。2013年に独立レーベルを立ち上げ、Bandcamp、Soundcloudで動きをみせているこの集団だが、情報を開示しない彼らのバイオグラフィーとヴィジョンは未知数であり、サウンドのみでレーベル・イメージを構築している。そのサウンドに線引きを加えるならば、ジャズオールドスクール・ヒップホップ、トリップホップ、チルホップなどと分類できそうだが、その域はすでに超えた宇宙的な何かを私たちに提示しているように感じる。



彼らのコスミック・ビートで構成されたアルバム1つ1つに耳を澄ますと、ある時は宇宙旅行、ある時は新惑星の発見など、曇りガラスの向こうにはしっかりとコンセプトは存在している。新時代幕開けの兆候か、ただ単に彼らの趣味なのか、それともシーンへの挑戦か、、FUNKYPSELI CAVE RECORDSが作り上げる無重力の世界観の数々を微塵な憶測は一切抜いて、ストレスフリーで体験して頂きたい。

”Small Trip”


"Clap yo' hands everybody, if you got what it takes, cuz we the boom bap headz and we want you to know that these are The Spacebreaks!"

The new golden era is here.(from Bandcamp)

のメッセージと共に彼らが初めて世にだした2017年のファースト・アルバム『Tha Spacebreaks』。”Clap yo'~”のフレーズで反応したオールドスクール・ヒップホップ好きの方には説明不要だとは思うが、こちらは1980年にリリースされたヒップホップ史の教科書的存在、Kartis Blowの「The Breaks」。


緩やかなジャジー・バイブスとクラシック・ヒップホップで構成された14曲で構成されているこちらのアルバムは、起承転結をつけた曲調で小宇宙旅行を楽しませてくれ、ラスト・ソングで丁寧に生まれた星へと帰らせてくれる。オススメは、シンプルなビート・ループで魅せる5曲目「Kobalt 27」、ピアノとノイズが見事にマッチした7曲目「B Minor」、力強いドラムラインにATCQでお馴染みのあのメロディ・ラインを見事にマッチさせた8曲目「R.I.P.P」。

”Dark Side”


FUNKYPSELI CAVE RECORDS からの2発目を飾ったのはこちらの『Abstract Fusion』。ジャジー要素を極限にまでダーク・サイドに染めてみた実験的サウンドを感じさせる14曲が収録されている同アルバムは、安心させては、また不安にさせと、リスナーの心情をサウンドで見事に操りきり、つかみどころない満足感のみを私たちに与えてくれる。オススメはジャジー且つLo-Fiサウンドの効いた3曲目「Trick or Treat」、タイトル通りの8曲目「Evil Passage」、閑静な宇宙感を味わえる10曲目「Asttral Dust」。

”Planet Life”


3作目となったのは、FUNKYPSELI CAVE RECORDS のキー・パーソン的存在とみられるEl Jazzy Chavoがこれまでに手掛けたビートの数々から抜粋した16曲アルバム『Redirections』。16曲全てを通して、タイトル・ジャケット通り、別惑星での移住生活の光景が浮かび上がってくる。オススメはクラシックなドラム・サウンドから始まる4曲目の「Dreams In A Sewer 」、6~8曲間のハードコア・ヒップホップ調のフロー、そして現実世界へゆっくり丁寧に引き戻してくれる12曲目「Spontaneous 」。

”Stoned”


4作品目は、スウェーデンのビートメイカーTWELVEBITによるワールド・ミュージックをチョップしてのMPC打ち込みビート特集『Moon Reflection』。1~7曲目までは1分以内の落ち着いたループサウンドでゆったりと展開していき、8曲目からは堰き止められていたジャジー要素が一気にあふれ出し、雲から月が顔を出す。その月光により最高潮にまで浮遊するものの、14曲目に差し掛かった所で心の雲行きは再び怪しくなる。嫌な予感を漂わせつつ、ついに16曲目の「neva subserviant 」、17曲目の「think about it 」で完全に勘繰りゾーンに突入させられる。思考の果てまで到達して見えた自身の素直さが現れるのが19曲目の「straight from the heart 」。その後は、勘繰った過程を肯定させられるかのように、純粋で落ち着いた曲調へ。ふと気付くと、終盤の匂いがし、これまでの心の旅の終わりが少し物悲しくも明るい心持ちで、ラストソングを飾るクラシック・ヒップホップを堪能することが出来る。まるで人の心というものを1つのアルバムで表した、見事なアルバムだ。

”Ⅰ~Ⅻ”


タイトルが数字のⅠ~Ⅻとシンプルに作り上げられているこちらのアルバム『Low Pass Memories』。全体的にダーク・フィルターをかけつつも、ピアノの旋律でノスタルジー感を漂わせ、色でいう所の白でも黒でもない、どんよりしたグレーをLo-Fiサウンド共にクラシック・ヒップホップで展開していく。オススメは5曲目「Ⅴ」の記憶探検。心がぱっとしない日や、曇天の雨にはもってこいの1曲ではないだろうか。

”Back Once Again”


“Boom, bap, boom boom, bap”のメッセージと共に、再び1作品目の第二弾『The Spacebreaks vol.Ⅱ』が再起。ダンスミュージック、ヒップホップを軸に、14曲で構成される同アルバムは、どれもライムをのせたくなるインストゥルメンタル・ヒップホップ・ビートである。オススメは4曲目「 Mad tricks 」とレゲエ要素が加わる12曲目「Sun bwoi」。VOL.2ならではの充実度が味わえる、ゴールデン・ヒップホップを蘇らせたアルバムである。

”Short Stories”


こちらは2018年の年末にリリースされた7作目のアルバム『Short Stories』。特に抑揚なく8曲目までは短い地味なループ・ビートが続くが、思惑通りと言わんばかりに9~12曲でその曲調は一転し、華やかに展開する。ラスト3曲ではジャズ要素を上手く織り交ぜ全体的に清々しく、お洒落にまとめあげている。32曲の短編全てをヒップホップ・マナーに忠実に捉わせ、1つの長編へと作り上げた情緒あふれる作品となっている。

”Planetarium”


出だしクールなビートから始まり、ゆっくりと宇宙空間を表現していく2019年リリースの新作アルバム『Echoes From Another Cosmogony』。聴覚的プラネタリウムを体感したい方は同作に耳を澄ましてみてはいかがだろうか。おすすめは11曲目の「Without Dreams」。

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Writer / g.g

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