Anderson Paakの傑作曲『Tints』から"現代社会の意味"を読み解く。隠し事はダメな事?

2018/11/16

"ホームレスから一躍、有名人気アーティストへ"

anderson paak

現在LAの最前線で活躍するミュージシャン兼レコードプロデューサーであるAnderson Paak(本名Brandon Paak Anderson)は、1986年カリフォルニア、オックスナードでコリアン・アメリカンの母と・アフリカン・アメリカンの父の間に産まれる。ミドルネームのPaakは韓国の苗字=朴(パク)からきている。

家庭環境は複雑で、当時まだ7歳の頃、父親の家庭内暴力によって血まみれで倒れている母の前を、警察に連行され消え失せていく父の残像が未だに残っているという辛い思い出がある。

そんな彼の唯一の癒しとなるのは音楽だった。

10代の頃から音楽に没頭しており、音楽教師という職に就く。

そこで出会った韓国人の生徒と結婚。暖かい家庭を築きあげる。

しかし、転職したマリファナ農園での仕事を急遽失う事になり、妻と息子を連れてホームレス生活を送ることに、、

運気が回ってきたのは2011年、周りの支えもあって、音楽受注の仕事をしながら自身のデビューアルバムの製作を開始できるようになり、音楽キャリアをとことん積み出す。

2012年、ブリージー・ラヴジョイ名義で発表したミックステープ『O.B.E. Vol. 1』で初めて彼の名前が世に出る。

翌年のAnderson Paak名義で発表したEP「Cover Art」では、白人のフォーク、ロック等のクラシックな楽曲をジャズ、ソウル、R&B、ヒップホップに変換するという逆転の発想が功を成し、徐々に注目を集め出す。

そして2015年、ドクター・ドレが約15年ぶりにアルバムをリリースすると話題になっていたアルバム「Compton」に彼が参加したことにより、Anderson Paakの名前が世界に浸透する。

2016年に9th wonderやScHoolboyQなどを招き作り上げたセカンドアルバム「Malibu」は、称賛の嵐を呼び、グラミー賞を獲得する傑作となり、今の音楽シーンを牽引する一流アーティストの存在へと導いた。

豪華ゲストを迎えた待望のニューアルバム、『Oxnard』(オックスナード)

anderson paak

このアルバムの発表は数か月前からSNSなどで、かなり話題となっている。

それもそのはず。ゲスト陣が豪華すぎる、、

Dr. Dre、Kadhja Bonet、Snoop Dogg、Pusha T、J. ColeQ-Tip

BJ the Chicago Kid、Kendrick Lamar、、

90s好きならチェックせざるを得ないアルバムだ。

そんな待望のアルバム『Oxnard』から先日、MV(ミュージック・ビデオ)も公表されたKendrick Lamar参加の『Tints』を今回紹介したい。

現在のヒップホップシーンで不動の人気を保つKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)とのフューチャリングは今作で3回目。

前2作は、Dr.Dreのアルバム「Compton」から『Deep water』、サウンドトラックでもあった「Black Panther」から『Bloody Waters』と相性抜群の二人である。

今回リリースされた『Tints』は、MV共に2018年のアワードを確実に狙いに来ている力の入りようが見受けられる。

トラックは、夜の雰囲気を漂わせつつも、アップテンポでファンキーな仕上がりとなっており、西海岸のドライブにはもってこいの曲調だ。

そして、今話題となっているのがこの『Tints』のMV。

まず一度、目を通して頂きたい。

映画のネタバレサイトを見たくなるような誘発的ストーリーに加え、クオリティの高い映像の仕上がりは圧巻と言わざるをえない、、、

"アンダーソン・パークのシングル『Tints』(ティンツ)から読み解く現代社会"

anderson paak

〈Tint〉という単語について、

着色、陰影、サングラス…などの意味合いがあり、Window Tintingは、スモークがかった窓を意味するなど、"なにかを隠す"というニュアンスが込められているこの言葉。

では、『Tints』というこの曲には一体どういったメッセージが暗示されているのだろうか。

まず初めに、MVから読み解いていきたい。

MVの冒頭に出てくる

"Believe NONE of what you hear and only HALF of what you see"

という文。

この言葉は、アメリカの詩人作家であるEdgar Allan(エドガー・アラン・ポー)が1845年に残した言葉で、

"聞いたことは全て信じるな、見たものは半分信じろ"

というアメリカのことわざである。

anderson paak

続く、下着姿の女性が飲み物を取りながら、

"I really wants to live in an unmasked world"

"隠し事なしの世界に住みたい"

と、不安げに男性に語るシーン。

そして、『Tints』のイントロと共に男がイメージする世界が始まっていく。

anderson paak

PaakとLamarの二人は、その世界の中で、あらゆる境遇における役を見事に演じきっている。

ここでの登場人物が持つ共通点は、

"他人には見られたくない【裏の顔】を持っている"

という事。

ここで注目してもらいたいのが、どの場面においても、その人の【裏の顔】が始まる瞬間には、それを隠す為の”なにかしら"が存在しており、このMVではその部分にフォーカスをあてているという事が分かる。

ドア、窓、車、画面、カーテン、壁など…物理的に一目を避けれるもの。

つまり"なにかしら"とは、言い換えるなら"自分のプライバシーを守る盾"であることが分かる。

anderson paak

また、曲中に幾度も出てくるPaakのコーラスのフレーズ

"I need Tints"

"私にはTintsが必用だ"

歌詞全体の流れから考えても、ここでの"Tints"の存在は、悲観的というより、楽観的に捉えているようだ。

その意味で、”Tints”というものは本来の自分を解放させてくれる役割を担っているもの、

つまり"Tints"とは、自分を守る盾でもあり、ありのままの自分を出すのに必要な存在という風にまとめることが出来る。

anderson paak

”Tints”で隠された【裏の顔】で本性を剥き出しにし、【表の顔】で自身を抑制しているという矛盾した相互の関係性は、私たちが共存する現代社会での〈生き辛さ〉そのものを表しているのではないだろうか。

世界的に有名になったアーティストAnderson Paak とKendrick Lamarという二人の人間も直面している、世間のイメージによって作られた自分と本当の自分との葛藤、、、

その上で、

”〈Tints=隠し事〉というものは私たちの社会では、あって当たり前の存在"

と、明るく導いた彼らなりの考えを、今回『Tints』という曲を通して、同じ社会で葛藤している私たちに向けて伝えようとしているのではないだろうか。

"生き辛いこの世の中だけど、今日はドライブでもして全部忘れようぜ!"

といった彼らの粋のかかった、クールな開き直りソングとも言えるだろう。

2018年のアワードの予感漂う、最高傑作ではないだろうか。

anderson paak

ちなみに、動画の2:45あたりには今週発売のアルバム「Oxnard」においてエグゼクティブ・プロデューサーを任されいるDr.Dreとその妻が映っている。豪華客人を招いたAnderson Paakの「Oxnard」も是非チェックして頂きたい。

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g.g
We are One.,Peace.
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The Black Operaから紐解く現在社会Ⅰ

たまにふと考える。HIPHOPというカルチャーが生まれた奇跡的現象について。

それはまるで、ビッグバンから全てが作り上げられていったのと同じ様に、偶然に近い必然の連鎖で形成されていった壮大なカルチャーのように感じる。

私はHIPHOPというカルチャーの持つ、”両極端にある2面性”というものに興味を持った。

生と死。富と貧。成功と失敗、尊敬と中傷、、

それは当時顕著に表れた人種差別や経済格差という厳しい”社会”というフィールド内でのコンペティションから生まれた概念であり、

一瞬でどちらかに転ぶという”緊張感”は人間本来の潜在的なエナジーを引き起こしたのではないだろうか。

当時の社会で押し殺されたアイデンティティを解放する様々な社会への反発と同じように、そのエナジーはニューヨークのブロックパーティという解放の場でHIPHOPという一種のカルチャーへと形成されていった。

そしてそのバイブスは次第に世界中の人々の心を動かし、それから約40年という時を経て、HIPHOPという言葉は1つの概念として人々をまとめあげたのだ。

では、その短い歴史の中でHIPHOPカルチャーはどのように変化していったのであろうか。

”物足りなさ”

壮大なテーマを前に、ふと一息つこうとカフェに向かった私は、濃縮されたエスプレッソで目を覚まそうしたが、持ち合わせの小銭が足りず、やむ無くお手軽価格のアメリカン・コーヒーを。

日ごろの注意度の無さを反省しつつ、薄口のアメリカン・コーヒーで落ち着かせようとするが、やはりなにかが物足りない。

そういえば、物足りなさというものは、先日久々に行った最新チャートが流れる大きなクラブでも味わったなー。など考えつつ、眠い目をこすって作業に戻ろうとした丁度その時、私の頭にある言葉が浮かび上がってきた。

”HIPHOP濃度”

HIPHOPの広がり方はコーヒーと同じではないだろうか。

”珈琲”

ここでコーヒーの歴史をおおまかに。

コーヒー発祥における2つの起源説や10~15世紀におけるコーヒー禁止令など有名な話はさておき、

15世紀初頭のベネチアを皮切りに、ヨーロッパ全土へと浸透したコーヒー。

その黒いスープはヨーロッパの人々を虜にし、イギリスではコーヒーハウスが数多く作られ、紳士の社交場として人気を博した。

男たちはそこで政治を語り文学を論じ、ビジネスを展開していった。

一方フランスでは、コーヒーはフランス上流階級をも魅了してしまい、やがてサロンが数多く作られ、新しい文学や哲学や芸術が生まれていったそうだ。

そしてその波は一般市民にも及んで、街角には溢れんばかりのカフェが生まれていく。

コーヒーというものが大衆に馴染みだした頃、

フランスではドリップ式、イタリアではエスプレッソが考案され、それ以来コーヒーを飲むスタイルというものは徐々に変化を遂げていくこととなる。

この大きな流れはそのまま中南米へと広がっていき、コーヒーの栽培と共に世界各地にコーヒーは浸透していく。

”大衆化”

HIPHOPルーツに精通している方なら、上記のコーヒーの広まり方とHIPHOPミュージックの広まり方になにかしらの類似点を見出したにちがいない。

本来のエスプレッソやドリップ・コーヒーから、お手軽価格で薄口のアメリカン・コーヒー、またもやカフェ・オレ、カプチーノ、ラテ・アートなどなど、、、コーヒーの文化は長い年月をかけて様々な形に進化してきた。

禁酒法時代には、酒の代わりとして人々の心を癒し、その前には薬としても使用されるなど、黒いスープは多くの人々に愛され続けてきた。

やがて街のあちこちにカフェができ、コーヒーは大衆に馴染みだし、ビジネスとして成り立つほどにまで成長。

今では世界中のあちこちで誰しもがコーヒーというものを味わえるものになってきている。

しかし、現在の行き過ぎた大衆化は人々に本来の黒いスープの香りと苦みを忘れさし、利益が先行した薄口で調合されたものを一般的にしてしまっている気がする。

ある時を境に大衆化というものは、じわりと顔色を変え、根本にある本来の味を隠し、簡単で薄い性質に変化させ、一般的概念として成り立たせてしまったのではないだろうか。

時間をかけ、コーヒー豆を焙煎し、湯気の立ったお湯でドリップされて出来た一杯のコーヒーもコーヒーと言われ、自動販売機から出てくる缶コーヒーもまたコーヒーである。

これは、現在の社会のあらゆるものに言い換える事ができ、賛否両論は各々が決める時代であるからこそ、無論強く主張もするつもりはないが、

物心がついたばかりの子供にコーヒーの味を問われた時、私は自販機へは向かわず、焙煎機を手にとりたい。

”現在社会”

話はそれてしまったようでそれていないが、要するに、本物というものを知っているかどうかという事である。

ルーツを知るという事の意味合いは非常に深い。

上記で述べたようにHIPHOPというものは、人間本来の潜在的エナジーから生み出された1つの概念であり、その概念が生まれたルーツを敬い、進化させていき、継承していくという3つの宿命がHIPHOPカルチャーには存在していると私は思う。

もちろん進化を前提にしている為、そのやり方にはこれといった正解はない。

そのため、進化という言葉は様々な捉え方が出来るだろう。

ご存知の通り、現在のHIPHOPミュージックと言われているトラップ・ミュージックは賛否両論を起こしているが、

これもまたHIPHOPの進化の形と言えるはずだ。

しかし、進化以外の2つの重要な要素は、どこかないがしろにされているようにも感じる。

当時HIPHOPが世界中のヘッズの心を動かした、あの言葉にできない衝撃や、リリックの重み、響くメッセージ性など、それらは、その時代の先駆者が放った人間本来のエナジーから滲み出た産物であると私は考える。

現在の社会は、世界的に治安もよくなり、テクノロジーも発展し、昔と比べると、はるかに平和に近づいている。

つい先日 友人が射殺されたという事もなければ、外でたむろしているだけで警察に捕まる事もめったにない。

人々が社会に対して反発する動機は未だ何かしらで多いのかもしれないが、数十年前と比べれば、そのエナジーは弱まってきている。

その為、本来の厳しい社会を生き抜くコンペティションではなく、名声や数字や認知度を基準とされた大衆のコンペティションへとフィールドが移ったように私は感じている。

顔色を変えた大衆化社会での進化形が現在のHIPHOPミュージックと考えると、これはまた面白い。

そうなれば、目の付け所は、現在賛否両論されている音楽表現方法ではなく、そのフィールドを作り上げている現在の社会に目をつけばければいけない。

平和という幻想に形どられた現在の社会に対して本気で挑もうとしているアーティストは果たして存在するのだろうか。

”漆黒のエスプレッソ”

敢えて2010年以降から活動しだしたアーティストに絞り、色々とリサーチしてみる事に。

が、なかなかピンとくるアーティストは出てこない。

確かにそれっぽいものはいくらかある。

現在のトラップの流れに反対するもの。SNS自体に反対するもの。無所属でビック・レーベルに反発するもの。

しかし、私が味わいたいのは漆黒のエスプレッソ。

奥深くに存在する核に向かって正面から挑んでいるアーティストというものは中々見つからない。

徐々に自分で課した作業に嫌気がさし、氷が溶けてほぼ水と化した先程のアメリカン・コーヒーを飲み切ろうとした時、彼らは現れた。

喉に通る無味無臭のコーヒーとは裏腹に、目の前で流れるのは彼らの重厚なミュージック・ビデオ。

漠然と見終わると、それは一口にミュージック・ビデオとは言い難い、久々の緊張感を与えてくれるもの、

言い換えるなら、それは予告状に近いものであった。

アメリカン・コーヒーではなにか物足りないと思っていた私に、久々に漆黒のエスプレッソを味わわせてくれた、彼らの名前はThe Black Opera(ザ・ブラック・オペラ) 。

最近のトラップ・カルチャーを批判したレジェンドSnoopDogg、
Souls of Mischief のMC Tajai Masseyなど、HIPHOPの歴史を築きあげてきた面々が口をそろえてこう言っている。

”TBO(The Black Opera)みたいな奴らが現れるのを待っていたと。。”

The Black Operaから紐解く現在社会Ⅱ
に続く、、

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まさに聴覚的プラネタリウム。アテネの謎 レーベル”FUNKYPSELI CAVE RECORDS”

ギリシャはアテネを拠点とするFUNKYPSELI CAVE RECORDS。

2013年に独立レーベルを立ち上げ、Bandcamp、Soundcloudで動きをみせているこの集団だが、情報を開示しない彼らのバイオグラフィーとヴィジョンは未知数であり、サウンドのみでレーベル・イメージを構築している。

そのサウンドに線引きを加えるならば、ジャズオールドスクール・ヒップホップ、トリップホップ、チルホップなどと分類できそうだが、その域はすでに超えた宇宙的な何かを私たちに提示しているように感じる。

彼らのコスミック・ビートで構成されたアルバム1つ1つに耳を澄ますと、ある時は宇宙旅行、ある時は新惑星の発見など、曇りガラスの向こうにはしっかりとコンセプトは存在している。

新時代幕開けの兆候か、ただ単に彼らの趣味なのか、それともシーンへの挑戦か、、

FUNKYPSELI CAVE RECORDSが作り上げる無重力の世界観の数々を

微塵な憶測は一切抜いて、ストレスフリーで体験して頂きたい。

”Small Trip”

"Clap yo' hands everybody, if you got what it takes, cuz we the boom bap headz and we want you to know that these are The Spacebreaks!"

The new golden era is here. 

(from Bandcamp)

のメッセージと共に彼らが初めて世にだした2017年のファースト・アルバム『Tha Spacebreaks』。

”Clap yo'~”のフレーズで反応したオールドスクール・ヒップホップ好きの方には説明不要だとは思うが、こちらは1980年にリリースされたヒップホップ史の教科書的存在、Kartis Blowの「The Breaks」。

緩やかなジャジー・バイブスとクラシック・ヒップホップで構成された14曲で構成されているこちらのアルバムは、起承転結をつけた曲調で小宇宙旅行を楽しませてくれ、ラスト・ソングで丁寧に生まれた星へと帰らせてくれる。

オススメは、シンプルなビート・ループで魅せる5曲目「Kobalt 27」、ピアノとノイズが見事にマッチした7曲目「B Minor」、力強いドラムラインにATCQでお馴染みのあのメロディ・ラインを見事にマッチさせた8曲目「R.I.P.P」。

”Dark Side”

FUNKYPSELI CAVE RECORDS からの2発目を飾ったのはこちらの『Abstract Fusion』。

ジャジー要素を極限にまでダーク・サイドに染めてみた実験的サウンドを感じさせる14曲が収録されている同アルバムは、安心させては、また不安にさせと、リスナーの心情をサウンドで見事に操りきり、つかみどころない満足感のみを私たちに与えてくれる。

オススメはジャジー且つLo-Fiサウンドの効いた3曲目「Trick or Treat」、タイトル通りの8曲目「Evil Passage」、閑静な宇宙感を味わえる10曲目「Asttral Dust」。

”Planet Life”

3作目となったのは、FUNKYPSELI CAVE RECORDS のキー・パーソン的存在とみられるEl Jazzy Chavoがこれまでに手掛けたビートの数々から抜粋した16曲アルバム『Redirections』。

16曲全てを通して、タイトル・ジャケット通り、別惑星での移住生活の光景が浮かび上がってくる。

オススメはクラシックなドラム・サウンドから始まる4曲目の「
Dreams In A Sewer 」、6~8曲間のハードコア・ヒップホップ調のフロー、そして現実世界へゆっくり丁寧に引き戻してくれる12曲目「Spontaneous 」。

”Stoned”

4作品目は、スウェーデンのビートメイカーTWELVEBITによるワールド・ミュージックをチョップしてのMPC打ち込みビート特集『Moon Reflection』。

1~7曲目までは1分以内の落ち着いたループサウンドでゆったりと展開していき、8曲目からは堰き止められていたジャジー要素が一気にあふれ出し、雲から月が顔を出す。

その月光により最高潮にまで浮遊するものの、14曲目に差し掛かった所で心の雲行きは再び怪しくなる。

嫌な予感を漂わせつつ、ついに16曲目の「neva subserviant 」、17曲目の「think about it 」で完全に勘繰りゾーンに突入させられる。

思考の果てまで到達して見えた自身の素直さが現れるのが19曲目の「
straight from the heart 」。

その後は、勘繰った過程を肯定させられるかのように、純粋で落ち着いた曲調へ。

ふと気付くと、終盤の匂いがし、これまでの心の旅の終わりが少し物悲しくも明るい心持ちで、ラストソングを飾るクラシック・ヒップホップを堪能することが出来る。

まるで人の心というものを1つのアルバムで表した、見事なアルバムだ。

”Ⅰ~Ⅻ”

タイトルが数字のⅠ~Ⅻとシンプルに作り上げられているこちらのアルバム『Low Pass Memories』。

全体的にダーク・フィルターをかけつつも、ピアノの旋律でノスタルジー感を漂わせ、色でいう所の白でも黒でもない、どんよりしたグレーをLo-Fiサウンド共にクラシック・ヒップホップで展開していく。

オススメは5曲目「Ⅴ」の記憶探検。

心がぱっとしない日や、曇天の雨にはもってこいの1曲ではないだろうか。

”Back Once Again”

“Boom, bap, boom boom, bap” 
のメッセージと共に、再び1作品目の第二弾『The Spacebreaks vol.Ⅱ』が再起。

ダンスミュージック、ヒップホップを軸に、14曲で構成される同アルバムは、どれもライムをのせたくなるインストゥルメンタル・ヒップホップ・ビートである。

オススメは4曲目「 Mad tricks 」とレゲエ要素が加わる12曲目「Sun bwoi」。

VOL.2ならではの充実度が味わえる、ゴールデン・ヒップホップを蘇らせたアルバムである。

”Short Stories”

こちらは2018年の年末にリリースされた7作目のアルバム『Short Stories』。

特に抑揚なく8曲目までは短い地味なループ・ビートが続くが、思惑通りと言わんばかりに9~12曲でその曲調は一転し、華やかに展開する。

ラスト3曲ではジャズ要素を上手く織り交ぜ全体的に清々しく、お洒落にまとめあげている。

32曲の短編全てをヒップホップ・マナーに忠実に捉わせ、1つの長編へと作り上げた情緒あふれる作品となっている。

”Planetarium”

出だしクールなビートから始まり、ゆっくりと宇宙空間を表現していく2019年リリースの新作アルバム『Echoes From Another Cosmogony』。

聴覚的プラネタリウムを体感したい方は同作に耳を澄ましてみてはいかがだろうか。

おすすめは11曲目の「Without Dreams」。

こちらもCheck!
黒さ抜群、ギリシャのアングラ集団 ”DSC”。
2019年ブレイク間違いなし。スイスの兄弟ビートメイカー”okvsho”。
音楽を愛し続けるベルギーのトップ・コレクター”Mol”。
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「Millennium Jazz Music」のボス、”Gadget”。

近年、音楽ストリーミング・サービスの充実により、あらゆる独立レーベルが次々に誕生し、世界に名の通るBIGレーベルへと成長したものも多い。

あまたの人種が集まり、音楽が盛んなヨーロッパのシーンでは特に、こういった動きがよく見受けられる。

ところで、2003年にロンドンで設立された独立レーベル”Millennium Jazz Music”の存在はご存知だろうか。

イギリス、フランス、 カナダ、ドイツ、ネザーランド、ポーランド、アメリカ、ウクライナ、トルコ、ロシア、オーストラリアと数えきれない程の才能溢れるアーティストを抱えているこのレーベルは、
Jazzhop、Boombap、Instrumental、Electronic、Experimental Lyrica等と幅広いスタイルを扱っており、リリースはデジタル・CDは主流だが、ヴァイナルやカセットでのリリースも外さない、クラシックに重きを置いている。

以前紹介したギリシャのDigginSolidCratesや、メルボルンのDJ Mr.Lobも所属している。

黒さ抜群、ギリシャのアングラ集団 ”DSC”。
世界一の音楽都市メルボルンを代表するベテランDj Mr Lob。

そんな巨大な船の舵をとる船長が、ブリティッシュ・カリビアンのビートメイカー/DJ である”Gadget”だ。

”Gadget”

ドミニカで産まれ、北ロンドンで育った彼は、音楽家庭という事もあり物心がついた頃から日常に音楽が溢れていたという。

父からもらった音楽機材を幼少期から使いこなし、アンダーグランド・シーンの若きDJ/MCとして様々なクラブやラジオ・ステーションで活躍。

音楽への探求心が止まなかったと語る彼は、その後自身のスタジオを立ち上げ、

現在はサウンドエンジニア、プロデューサー、ボーカル・アーティスト、ゴースト・ライター、DJ、プロモーターの顔を持ちながら、音楽集団Jazz Jousters、レーベルMillennium Jazz Musicをまとめあげている。

今では数えきれないアーティストを抱えるレーベルMillennium Jazz Musicだが、

レーベルを設立する上で、世界中の数多いるアーティストの中から、自身の嗅覚のみで才能を秘めたアーティストを見つけ出すという途方もない努力を経たという。

私が初めてMillennium Jazz Musicの存在にたどり着いた時の衝撃は今でも忘れない。

センス抜群のJazz Hiphopサウンドに加え、彼らの音楽に対する信念と態度は、当時の私には極めてクールに映り、現在のヨーロッパのシーンの層の厚さを痛感した。

音楽を知り尽くす彼の鋭い感覚は、確実に功を成したといえるだろう。

そこで今回は、数多の顔を持つGadgetという人物を、大きな船を動かすボスとしてではなく、グッド・サウンドを世のリスナーに届ける1人のアーティストとして紹介したい。

数多存在する彼の楽曲の数々からいくつか厳選し、それとなくジャンル分けにしてみた。

時間があるときにでも是非、全ての楽曲を聞いて頂けると幸いだ。

私が感じたヨーロッパのジャズ・ヒップホップシーンの分厚さが見えてくるのではないだろうか。

"JAZZ"

"REMIX"

"WORLD MUSIC"

"DEEP"

”SENTIMENTAL”

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